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ライフサイエンス社の医学雑誌「治療学」2008年3月号に分子栄養学三石理論について執筆しました。


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▼ 迷ホラ吹きの読書感想文 〜 食品の裏側 ▼

 分子栄養学を勉強中の迷ホラ吹きさんに、「食品の裏側」という本を読んでもらうことにしました。安倍司という人の書いたよく売れている本だそうで、帯には「知れば怖くて食べられない」とのキャッチフレーズが。

 またトンデモさんの不安煽り本かと思って「はじめに」を読んでみたら『食品添加物の危険性だけを騒いでも意味がない』とあり、添加物の毒性のみを煽り立てるのが目的ではないといったことが書かれています。

 さあ、いったいどんな本なのでしょう。

媚多眠氏


 媚多眠さんに「食品添加物に関しておもしろく勉強できそうだよ!」と頂いたので、期待して読んでみました。だけど、なんかワイドショーでも見ているような、おもしろいけど胡散臭くて内容の薄い本でした。

 だいたい「素朴な疑問」を持てと言うのは良いけれど、

 『私は添加物の「物質名」や「危険度」を無理に勉強して覚える必要はないと思っています。

では、いけないと思うんですよね。

 ぼやき先生にいつも言われていますが、少しずつでも勉強して理解することが重要ですって。それをしないと、以前のぼくみたいに何度でもトンデモに騙され、煽りに乗ってしまい無用な不安に駆られることに繋がるんですね。

 『「素朴な疑問」を持つことが添加物と向き合う最初の第一歩です。そして「常識的」に考えれば、「なんかヘンだわ、気持ちが悪い」と思うのではないでしょうか。

 そう思ったらちゃんと調べるべきで、そこで考えもせず排除していったらなんの進歩にもならないじゃないですか。少なくともクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸、ビタミンC、ニコチン酸アミド、炭酸カルシウム、グリシンなどの添加物をむやみに恐がる必要性はどこにあんでしょうね? 

 クエン酸も酢酸も乳酸も体内ではありふれた物質だし、ビタミンCやニコチン酸にいたっては栄養素ですよ。この人、化学科出身なのに・・・。

 告発本というだけあって面白い話もあるけど、間違った記述が多いのも気になります。
 まあ、簡単に要約しているから仕方がないとはいえ、日本酒の話など醸造家が読めば『オイオイ』ってなことも書いてありますね。吟醸酒は精米法が違うだけじゃないって。ここはぼくの得意分野です(^-^)v

 ブドウ糖果糖液糖を子供の糖尿病の原因にするのもどうかと思いますけど、

 『甘味料として使われる「サッカリン」は発ガン性を疑われていますし、「アスパルテーム」もフェニルケトン尿症などの問題があるといわれています。

というのもの、ウソつきといって良さそうな気がします。

 サッカリンのヒトへの発ガン性はとっくに否定されていますし、チューインガムにしか使用されてないと聞いています。
 アスパルテームフェニルケトン尿症の問題はアスパルテームに含まれるフェニルアラニンなんですが、これはとっくに解決しているようですね。だって、フェニルケトン尿症はフェニルアラニンというアミノ酸の代謝阻害という遺伝病だってことですから、この病気の人でなければ全く関係ないわけです。しかも、日本では全ての新生児でこの病気が検査されているというじゃありませんか。だいたい、フェニルアラニンってぼくでも知ってる必須アミノ酸だし。

 塩に関する記述だって不安を煽っています。
 味の問題はともかくとして、自然塩だろうが合成塩だろうが健康に対する影響は同じですよ。調味料である塩ごときに含まれるミネラルなんか、天然塩だろうが主食や副食に含まれるミネラル量に比べれば無視できるくらいのものなはずです。
 前に聞いた、黒砂糖にはカルシウムが多いから身体に良いっていうトンデモ話といっしょだなぁ・・・。

 添加物のメリットにも理解を示そうと書いてはあるけど、実はいっそう不安を煽っているようにも読めるだけに悪質といえなくもないですね。

 たとえば、たまには子供たちに添加物入りのものを食べさせるのも仕方ないが「見たこともないカタカナを食べさせちゃってごめんね。」と反省の気持ちが生まれることに意味がある、なんて書いてあります。

 消費者をバカにしているというか読者を幼稚に扱っているというか、『カタカナ食品よりひらがな食品を』なんていっているトンデモ栄養士の臭いもしてきます。しかもそこに、添加物とは関係ない“美談”を織り込むところがトンデモ臭プンプンです。
 食べ物を尊く思うとか感謝する気持ちが大切だという話と添加物の害の話は、違う次元の話ですって。良い話をつなげて書くことにより、反論をさせにくくしているわけですね。これは、ニセ科学の代表、江本勝による「水は答えを知っている」の水にありがとうの話につながってます。

 こんなふうに書いていると「おまえは添加物をたくさん使った方が良いのか」なんていわれそうな気がしてきますけど、誰だって余計な添加物なんかない方が良いに決まっています。
 「添加物の情報公開」大いにけっこうです。
 でも、そんなに不安をかき立てるほどのものではないだろうってことなんですよ。

 具体的に身体に対する影響がどうだということは書いてないので、トンデモ本というほどのものではないかもしれません。でも、公平を装いつつ添加物のデメリットだけを必要以上にあげつらう『扇動本』のような感じは、充分します。

 へぇ〜ってな部分もあったけど、結局内容の薄い本だったなぁ。読むのが遅いぼくでさえ、4時間くらいで読めちゃったものね。添加物をそんなに気にするくらいなら、考えるべきことはもっと他にあるんじゃないのってぼやき先生に言われそうです。

 前提条件として『世の中に【絶対安全な食品】など無い』ということを認識してない人が多すぎるから問題だと媚多眠さんが言ってました。
 無添加食品はもちろん、無農薬野菜や自然食品なんかかえって危険性が高いことも多いってのに。この安倍さんも認識不足なのかも知れませんね。

 添加物を使わない方がいいという考えを述べるにしても、前回媚多眠さんに読まされた渡辺宏著「食の安全 心配御無用!」(朝日新聞社)の方がよほど説得力がありました。

 渡辺さんは食品添加物の一日摂取許容量を考慮しながら、こんなふうな書き方をしています。

 『化学調味料に問題があるとすれば、毒性などではなく、安易に使われすぎていることのほうではないでしょうか。グルタミン酸ソーダというのは、粗悪な原料やいいかげんな製法の食品でも、何とか食べられるようにしてしまう「魔法の粉」なのですね。・・・中略・・・
 どちらがいいという話ではありませんが、少なくとも安全性に問題がない以上、あまりにも「化学調味料ゼロ」にこだわりすぎるのはどうかと思います。ゼロ信仰の陰には、かならずインチキ商品がはびこるからです。

そして、

 『食品添加物を恐がる人たちでも、「表示がわかりにくい」といって平然としている人が少なくありません。恐いのなら少しは勉強すべきでしょう。

というくだりには、全くその通りだと思いました。このぼくでさえ、チマチマと分子栄養学を勉強しているんですから・・・。

迷ホラ吹き

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     ▲ぼやき先生から迷ホラ吹きさんへ▲

 活字を鵜呑みにしないというワシの教えが生きていたようで一安心だな。

 漠然とした良い話、道徳的な良い話が絡んでくると科学的な目は曇りがちになるものさ。

 結論を決めてから話し合うディベートでなく、真実を求める議論を大切にしたいものだ。

 大切なのは勝ち負けでなく、真実に近づくことなんだから・・・。

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2006年10月

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