カゼ・インフルエンザ-1 迷ホラ吹き:フェーックショイ、チクショウ! かぜひいちゃった。ここのところ寒さが続きますねえ。どうして寒いと、こうカゼひくんでしょう。 媚多眠氏:チクショウとは親爺臭いですが、またカゼですか? よくひきますね。 迷ホラ吹き:またって、この冬まだ2回目、その前は8月後半の残暑厳しい時ですから、そんなによくカゼをひくわけでもないでしょう。 媚多眠氏:あれ? さっき、寒いとカゼをひくって言ったのに残暑厳しい時にもカゼをひいているんじゃないですか。 ぼやき先生:そういうことなんだな。カゼの原因はウイルスだから、いくら寒くてもウイルスがいなければ、カゼをひくことはないのさ。 迷ホラ吹き:ウイルスねえ、僕は寒いからカゼをひくと思っていましたが、確かに暑い夏でもカゼをひくことはありますね。 媚多眠氏:そうでしょう。それに冬のカゼといえば、インフルエンザ。これがウイルスだってことは、聞いたことがあるんじゃないですか? 迷ホラ吹き:そういえばそうでした。一昨年(1998〜1999)のインフルエンザはひどくて、死んだ人が何人も出ているんですよね。 媚多眠氏:そうです。免疫力がまだととのっていない子供や、免疫力が落ちているお年寄りにとっては注意が必要です。 ぼやき先生:免疫力ってのは、病原菌やウイルスのほか、身体にとっての異物を排除する仕組みの力、ということなんだな。 迷ホラ吹き:なるほど。でも、インフルエンザが流行ってもかからない人もいるし、かかってもひどくならない人もいますよね。こういう人は、その免疫力が強いってことなんですか? もしそうなら、その免疫力とやらを強くすることはできないものでしょうかね。 媚多眠氏:うがいや手洗い、マスク、人込みに行かないなど、ウイルスをなるべく身体に入れない努力も大切ですが、ビタミンCやタンパク質などの栄養に気をつけることも重要でしょう。 迷ホラ吹き:カゼにビタミンCって話はよく聞きますけど、僕は野菜も果物もよく食べるので大丈夫でしょう。 媚多眠氏:そのわりに、よくカゼをひきますねえ。 ぼやき先生:まあ、待てまて。今の君たちの話にはポイントが二つあるんだが、その前に、カゼにビタミンCがいいって言う話が通らなければいかん訳だ。 媚多眠氏:ぼやき先生、分かりやすく話してください。 |
カゼ・インフルエンザ-2 ぼやき先生:ウム。まず、ウイルスは鼻やのどの粘膜につくだろう。正常な粘膜の持ち主なら、粘液をたっぷり出してそれを排除しようとするんだな。 迷ホラ吹き:なるほど、たとえば鼻水ですね。 ぼやき先生:排除しきれないと、細胞に取りついたウイルスはどんどん増殖しようとするんだ。ほっとけば、細菌感染までおこして大変なんだが、その時、身体もだまっちゃいないってわけさ。 媚多眠氏:インターフェロンですね。 ぼやき先生:そう、身体はウイルスに対して、とりあえずインターフェロンで対抗するんだ。 迷ホラ吹き:エッ? インターフェロンって、C型肝炎の人なんかが使う薬のことじゃないんですか。 ぼやき先生:そうなんだがね、本来は自分の身体でつくる、糖とタンパク質からできた物質なんだ。 迷ホラ吹き:自分の身体でつくるものだったんだ! 知らなかった。じゃあ、もしかしたら、そのインターフェロンとビタミンCは関係があるんじゃないですか。 媚多眠氏:いいカンしてますねえ。さすがうちの常連客だ。 ぼやき先生:さっき言った通り、インターフェロンは糖とタンパクからできているんだが、これの合成に『助酵素』としてビタミンCが必要とされるんだな。 媚多眠氏:つまり、ビタミンCが足りてないとウイルス性疾患すべてに弱くなるって事です。 迷ホラ吹き:へえー。 ぼやき先生:ここでさっきの二つのポイントなんだが、一つはインフルエンザが流行ってもかからない人がいるってことだ。免疫力の問題だな。 迷ホラ吹き:免疫力の強い人は正常な粘膜を持っていて、インターフェロンもジャンジャン作れるってことなんでしょうか。 ぼやき先生:そういう体質ってことになるな。さて、もう一つのポイントはなんだと思う? 迷ホラ吹き:もしかしたら、僕に関係があるんじゃないですか。 媚多眠氏:「野菜や果物をとっているのにカゼをひく」ってことですね。 迷ホラ吹き:そうなんですよ。ビタミンCはとれているはずなのに、おかしいなあ。 ぼやき先生:実は、ビタミンCには、インターフェロン合成以外にもたくさんの働きがあるんだ。 |
カゼ・インフルエンザ-3 迷ホラ吹き:えっ? そんなにいっぺんにスラスラ言わないでください。酵素が何ですって? 媚多眠氏:助酵素としてのビタミンの形はだれにとっても同じだけれど、酵素の形は人によって違うって言ったんですよ。 迷ホラ吹き:それが、どうかしたんですか? 媚多眠氏:ぼやき先生は、そこに『体質』というものの本質を見ているんです。 ぼやき先生:ワシの尊敬する物理学者・三石巌氏の達見なんだがな。 迷ホラ吹き:……? ぼやき先生:分子生物学によって分かってきていることなんだがね。 迷ホラ吹き:ブンシ、セイブツ、ガク? 媚多眠氏:そう、分子・生物学。この『分子』っていうのは遺伝子分子のことです。それが『DNA』という物質です。 迷ホラ吹き:知ってますよ、DNA。『遺伝子・DNA』ってやつでしょ。 媚多眠氏:そのDNAレベルの生物学が、分子生物学というわけです。 迷ホラ吹き:おもしろそうだけど、何だか難しそうだなあ。 ぼやき先生:この分子生物学のおかげで、生命というものが化学や物理の法則で説明できることになってしまったんだ。特別な怪しい生命力なるものは否定されたってことなんだな。 迷ホラ吹き:つまり、どういうこと? 媚多眠氏:いわゆる「神様が生命をつくったのではない」ってことかな。学生時代の化学や物理を思い出せってことですよ。 迷ホラ吹き:ヒエーッ! そんな殺生な。 ぼやき先生:そんなこといって理科離れの頭をしていると、インチキ健康食品やインチキ宗教にだまされるんだがな。 迷ホラ吹き:が、頑張りますから、分かりやすくお願いしますね。 ぼやき先生:まあ、ここでは大風呂敷を広げないでいこう。では、まずさっきの酵素と助酵素の話を思い出してくれ。今日の話の上では、インターフェロンを合成するための酵素と、その助酵素であるビタミンCということだな。 迷ホラ吹き:ハイ。 ぼやき先生:そのインターフェロン合成酵素をビタミンCがうまく助ければ、インターフェロンはつくられるってことだ。 迷ホラ吹き:分かります。 ぼやき先生:そして、ここからが大事なことなんだが、酵素の形は人によってみんな違うと考えられるんだ。なぜなら、全く同じDNAを持つ人はいないと考えてよいからなんだな。 迷ホラ吹き:う〜ん、「酵素の形は人によって違う」か…。 ぼやき先生:そう、ビタミンは体内で作るものでなく、外からとるものだからな。 迷ホラ吹き:なるほど。 ぼやき先生:では、酵素の形が人によって違うとどういうことがおきるかというと、つまり、助酵素とのくっつきやすさや相性に違いが出るということなんだ。 |
カゼ・インフルエンザ-4 媚多眠氏:インターフェロンにからめて考えてみて。 迷ホラ吹き:ちょっと整理してみますから、待ってください。 媚多眠氏:はいはい、あわてなくていいですよ。 迷ホラ吹き:まず、インターフェロンをつくるための酵素があって、その酵素はビタミンCがないと働けない。 媚多眠氏:ええ、まずそういう事実がありましたね。 迷ホラ吹き:そして、その酵素は人によって形が違うため、ビタミンCとのくっつきやすさに差が出る…。 媚多眠氏:いいぞ、その調子。 迷ホラ吹き:…ということは、インターフェロンのつくりやすさに個人差が出るということじゃないですか。 ぼやき先生:御名答。立派なもんだな。 迷ホラ吹き:僕の身体の中の、インターフェロンをつくるための酵素は、ビタミンCとくっつきにくいということなんでしょうか。 ぼやき先生:その可能性は高いんだな。 迷ホラ吹き:だとしたら、僕がカゼをひかないためには、どうしたらいいのでしょう。 ぼやき先生:とりあえず、ビタミンCをもっとたっぷりとってみることだろう。野菜や果物ではまにあわんってことだ。前に言ったことを思い出してほしいんだが、ビタミンの働きは多様だ。なかでもCは量的に不足しやすいビタミンの筆頭なんだな。それに正常な粘膜のためのA不足だって考えられる。最近の研究では、B6が免疫系に重要な役割を持つことも分かったんだ。 迷ホラ吹き:栄養ってのは、何でも好き嫌いなく食べればいいってもんじゃないってこと? ビタミン剤を飲んだほうがいいのかな。でも、ビタミン剤って薬でしょう。 ぼやき先生:ビタミンってのは、どんな形をしていようが科学的には栄養物質だ。だから、媚多眠氏のいるようなお店でしっかり相談して求めれば何の問題もなかろう。さらに言いたせば、それらビタミンが足りていてもタンパク質が足りていないと話にならん。酵素が作れないことを想像すれば、その重要性は理解できるんじゃないかな。 迷ホラ吹き:なるほど。栄養って奥が深いんですね。 ぼやき先生:まだまだ、活性酸素やリンパ球の話もあるんだが…。 迷ホラ吹き:今日はこのくらいで勘弁してください。うちへ帰ってもう一度整理しなくちゃ。 媚多眠氏:では、続きは後日ということで。 |