遺伝子・主酵素そして栄養の重要性-1 媚多眠氏:いかがですか? カゼの具合は。 迷ホラ吹き:おかげさまで、もう大丈夫です。しっかりビタミンCを飲んでますから。 媚多眠氏:前回の学習の成果ですね。タンパク質も忘れないでくださいね。タンパク質があってこそ、ビタミンの働き場があるということなのですから。 迷ホラ吹き:そうそう、そうでした。ところで、インターフェロンを作る力に個人差があるという話から、僕はビタミンCを飲むことにしたんですが、他のビタミンについても同じようなことがあるんですか? 媚多眠氏:いいところに気がつきました。早速、先生にお尋ねする前にお聞きしますが、迷ホラ吹きさん、どの位ビタミンの種類を知っていますか? 迷ホラ吹き:えっ? け、けっこう知ってますよ。♪エイビーシーディーイーエフジー♪っと。 媚多眠氏:なに、ふざけているんですか。 迷ホラ吹き:すみません。本当は、A,B,C,D,Eくらいしか知らないんです。ビタミンBは、B1とかB2とかあったと思いますが…。 媚多眠氏:なかなか知っているじゃないですか。 ぼやき先生:そうなんだな。 媚多眠氏:コレステロールといえばみんなの嫌われものですが、常識の嘘が結構あるのでしっかり勉強しておきたいものです。 ぼやき先生:ウム、その話もおいおいするとして、迷ホラ吹きさんの質問は「ビタミン必要量の個人差の問題が、C以外にもあるのか」ということだったな。 迷ホラ吹き:そうなんです。 ぼやき先生:じつは、作るだけじゃなくて壊すときにも働くから、身体の中の化学反応に関わる重要物質が酵素だと言っていいだろう。 迷ホラ吹き:それで、その酵素ってやつこそ、自分のDNAが持つ遺伝子によって作られるものだったんですよね。 媚多眠氏:よく復習してきましたね。「DNAが持つ遺伝子」とはよく言ったものです。 ぼやき先生:前回はその話をしなかったので、予習をしてきたってことになる。 迷ホラ吹き:えっ? 予習なんて全然してませんけど…。 |
遺伝子・主酵素そして栄養の重要性-2 媚多眠氏:な〜んだ、「DNAが持つ遺伝子」ってのは偶然の言い回しですか。 迷ホラ吹き:…? DNAは、遺伝子でしょう? ぼやき先生:いや、遺伝子はDNAなんだが「DNAは遺伝子だ」とは言えないんだな。 迷ホラ吹き:ど、どういうことでしょう? ぼやき先生:DNAが『デオキシリボ核酸』の略称だということは御存知かな。まあ、名前はどうでもいいんだが、分子ってのもそれぞれ固有の形を持っているんだ。目に見えないミクロの世界のことだから、実感がわかんだろうがね。 迷ホラ吹き:分子の形ですか…。でも、それがどうしたんですか? ぼやき先生:DNA分子がどういう形をしているかというと、長い縄梯子がねじれたようになっているんだな。『DNAの二重ラセン』なんて言葉を聞いたことがあると嬉しいんだがね。 迷ホラ吹き:聞いたことあります! 縄梯子がねじれたっていうのが、二重ラセンの意味だったのですか。これは、イメージできますね。 媚多眠氏:そうこなくっちゃ。 ぼやき先生:DNA分子は長い縄梯子みたいになっているわけだが、それ全部が遺伝子だということではないってことなのさ。それどころか、遺伝子になっている部分は、全体の5%位しかないっていうんだから驚きだ。残りの95%は何をやっているか不明なんだ。 迷ホラ吹き:なるほど! そういう意味だったのですか。よーくわっかりました。ところで、ですね、そのー、遺伝子って何なんでしょう? 遺伝子っていうくらいですから、親から貰ったもので、酵素を作るって話をうかがったわけですが、他には何やってんですか? 『遺伝子DNA』ってやつは。 ぼやき先生:話に乗ってきたようだな。分子生物学の『分子』というのは遺伝子分子のことだって話、覚えているかな。 迷ホラ吹き:もちろん。 ぼやき先生:では、分子生物学入門とでもシャレ込むか。 媚多眠氏:最初の質問はどうしましょう。 迷ホラ吹き:すっかり忘れていました。 ぼやき先生:いろいろなビタミン必要量の、個体差の問題だったな。遺伝子の話をしていくと、おのずと答えは出てくるので放っておこうと思うんだが。 迷ホラ吹き:いいですよ。話が面白くなってきました。でも、少しづつ、分かりやすくをモットーにしてくださいね。 ぼやき先生:ウム、では、いきなり核心を突くからよく聞いてくれ。「遺伝子は酵素を作ることのほかは何もやっていない」。 迷ホラ吹き:ヘッ? ぼやき先生:正確に言えば、*酵素の設計図になっているだけなんだな。 迷ホラ吹き:と、おっしゃいますと? *正確に言うと遺伝子はタンパク質の設計図になっているということで、酵素だけの設計図ではありません。また、そのタンパク質を作るためのRNAもコードしています。 |
遺伝子・主酵素そして栄養の重要性-3 媚多眠氏:酵素はタンパク質だってことは覚えていますか。 迷ホラ吹き:もちろん。だって、その酵素のタンパク質が働くとき、ビタミンが必要だったんじゃないですか。 ぼやき先生:実に心強いな。では、これも覚えておいてほしいんだが、タンパク質は『アミノ酸』がつながって出来ているということだ。 迷ホラ吹き:はい、アミノ酸がつながってタンパク質ね。 ぼやき先生:そうなると、酵素もアミノ酸がつながったものってことになるだろう。そして、そのタンパク質作りに参加できるアミノ酸の数は20種類決まっているんだ。 媚多眠氏:そして、遺伝子は、酵素タンパクを作るための設計図になっているだけ…。 迷ホラ吹き:ということは、「アミノ酸のつなぎ方が書いてあるだけ」ってことになっちゃうのかな? DNAには。 ぼやき先生:そう。遺伝子が、身体の細胞の中にあることは知っていると思うが、細胞というのは化学工場みたいなもので、いろいろなものを作ったり壊したりしている。それはみんな化学反応なんだが、その反応の調節に酵素がかかわっていて、遺伝子はその酵素の設計図になっているにすぎないんだ。 迷ホラ吹き:『酵素の設計図』ですか。 ぼやき先生:そう、親から子が受け継ぐ遺伝というのは、アミノ酸のつなぎ方だけってことさ。他にはない。 迷ホラ吹き:そ、そんな。 ぼやき先生:実に、あっさりしたもんだな。 媚多眠氏:まったくもって、驚きです。 ぼやき先生:DNAは「アデニン(A)」「グアニン(G)」「シトシン(C)」「チミン(T)」という4種類の『塩基』を持っている。 迷ホラ吹き:知らない言葉の連続ですよ〜。 ぼやき先生:すまんが耳慣れてもらうしかないんだな。『塩基』というのは、DNAの縄梯子の梯子段に当たる部分で、2個の塩基がくっついて1本の段になっている。必ず『AとT』『GとC』が対になっているってことなんだがね。 迷ホラ吹き:そのわけの分からないことに、意味があるんですか? ぼやき先生:重要な意味があるんだが、今はその説明でなくアミノ酸がらみの話だ。 迷ホラ吹き:そうでした。 ぼやき先生:実はこの4つの塩基のうち、3つを並べて1つのアミノ酸に対応させるという暗号になっているのが、DNAなんだ。 迷ホラ吹き:ふ〜ん、暗号ねえ…。 ぼやき先生:このアミノ酸に対応する暗号配列が、大腸菌などの単細胞生物から我々人間まで同じだということも驚きなんだな。例えば『AUG』と並べば、それは『メチオニン』になる。 |
遺伝子・主酵素そして栄養の重要性-4 媚多眠氏:いったい、このことは何を意味すると思いますか? 迷ホラ吹き:人間の祖先は大腸菌…? ぼやき先生:この暗号配列は大腸菌どころかウイルスまで一緒なんだ。つまり、すべての生き物の祖先は一つだってことなんだな。人間を含めて、地球上の多種多様な生き物の祖先は、たった一個の細胞なのさ。 迷ホラ吹き:ゲゲゲーッ! やっぱり神様がアダムとイヴを作ったのではないんだ。 ぼやき先生:まあ、そういうことになるんだが、ちょっと大風呂敷を広げすぎたかな。 媚多眠氏:大事なのは、身体の中の化学反応を進めるには、遺伝子の設計図どうりの酵素が作られなければ話が始まらない、ということですね。 ぼやき先生:その酵素による化学反応を『代謝』というわけだ。 媚多眠氏:タイシャといっても、出雲大社のタイシャではありませんよ。 迷ホラ吹き:いくら僕があわてものでも、そのくらい分かります! 媚多眠氏:失礼しつれい。代謝というのはとても大切なので、ちょっと印象づけようと思ったんですよ。 ぼやき先生:すべての生き物は、古いものが新しいものと交代している。すなわち代謝が行われているんだが、これは不断に起こる現象で、止まることはない。これがストップすることは死を意味するんだ。わかるかな? 迷ホラ吹き:わかりますとも。生き物はみんな代謝が行われていて、代謝が止まることが死ぬってことなんでしょう。 ぼやき先生:つまり「生命の実体は代謝だ」と言っていいんだな。 迷ホラ吹き:異議なし。 ぼやき先生:そして、代謝というのは酵素をなかだちとする化学反応のことなんだ。 迷ホラ吹き:それも了解。 ぼやき先生:ということは、生命の実体が代謝なんだから「酵素が生命をにぎっている」と言えることにならんかな。 迷ホラ吹き:なるほど。遺伝子DNAの設計図に、酵素を作るための暗号しかないってことの意味がわかってきました。「生命のカギ」の設計図なんですからね。確かに、DNAは生命のカギを握っていることになりまさあ、お代官様ぁ。 媚多眠氏:ムムッ、やっとおぬしにも『DNA→酵素→代謝』の関係が理解できたようじゃな。こりゃあ、愉快よのう駿河屋、ワッハッハッハッハ…。 ぼやき先生:何をふざけとるか知らんが、そこに少し付け足そう。 媚多眠氏:そして、その酵素の働きにビタミンがからむんですね。 ぼやき先生:ウム、前にも言った通り酵素が働くためには『助酵素』を必要とする場合が多く、それがビタミンであることも多い。つまり、酵素は、タンパク部分と、非タンパク部分からなるってことなんだ。そこで、DNAの設計図によるタンパク部分をわざわざ『主酵素』と呼ぶんだな。 |