EPAとDHA-1 ぼやき先生:今日は「EPA」の話からだったな。 媚多眠氏:3系統のプロスタグランディンの材料になる脂肪酸です。 迷ホラ吹き:魚に多いんでしたね。 媚多眠氏:魚の油といえば「DHA」なんてのもあります。 迷ホラ吹き:アッ、それは知っていますよ。マグロの目玉なんかに多くて、頭が良くなるってヤツでしょう? ぼやき先生:頭が良くなるかどうかは知らんが、脳の神経細胞や目の網膜に多く存在することは事実なんだ。「ドコサヘキサエン酸」と言うのが、DHAの正式名称なんだがね。 媚多眠氏:ドコサ・ソコサ・アソコサなんて言ってはダメですよ。 迷ホラ吹き:残念、先に言われた! 媚多眠氏:へっへっ。 ぼやき先生:・・・エイコサペンタエン酸にしても、ドコサヘキサエン酸にしても脂肪酸分子の意味を説明している名前なんだ。 迷ホラ吹き:と言うのは、どういうことなんですか? 媚多眠氏:「モノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ、ノナ、デカ」なんてのを聞いたことはありませんか? 迷ホラ吹き:なんですか? そりゃ。 媚多眠氏:ギリシャ語で、1から10までの数字を表しているんですよ。 迷ホラ吹き:そういえば、前にアミノ酸が3つで「トリ・ペプチド」なんてのが出てきたような・・・。 ぼやき先生:グルタチオンのことだな。例えば、モノの例だと、モノレールなんてのがあるし、テトラポッドやオクトパスなんてのは聞いたことあるんじゃないかな。 迷ホラ吹き:なるほど。レールが1本だからモノレールだったのかあ。タコは足が8本でオクトパスねえ。 媚多眠氏:テトラポッドというのは4方向に足が出ているコンクリートで、波打ち際に置いて波を弱めるものです。 迷ホラ吹き:で、それが何だって言うんですか? ぼやき先生:エイコサもドコサも数を表しているってことさ。 媚多眠氏:20と22でしたね。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。 ぼやき先生:脂肪酸というのは炭素原子が鎖のように長くつながっているんだが、エイコサもドコサも、その炭素原子の数を表しているんだな。 迷ホラ吹き:エイコサペンタエン酸の炭素原子の数は20ってこと? 媚多眠氏:そうです。 迷ホラ吹き:じゃあ、残りのペンタエンってのは? ぼやき先生:二重結合が5つということさ。 |
EPAとDHA-2 迷ホラ吹き:なるほど数はわかりましたが、二重結合って何ですか? ぼやき先生:炭素には結合するための手が4つあって、その炭素原子同士がひとつづつ手を出しあって結合しているところと、二つづつ出し合って結合しているところがあるってことなんだな。 媚多眠氏:エイコサペンタエン酸は、20個の炭素原子が一列に並んで結合していて、ふたつづつ手を出しあって結合している部分が5ヶ所あるということなんです。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。よく分らないなあ。 媚多眠氏:今度、そのイメージ図をお見せしますよ。 ぼやき先生:それより、その二重結合があることの特徴をつかんでおいたらいい。まず、二重結合があると柔らかくなるんだ。 迷ホラ吹き:柔らかくなる? ぼやき先生:そう。固いアブラと柔らかいアブラがあったら、柔らかいほうが二重結合が多いってことなんだな。 迷ホラ吹き:固いアブラと柔らかいアブラ? ぼやき先生:ラードやヘットは常温で固体だろう。しかし、天ぷら油なんかは液体だ。潤滑油として使うグリースなんてのはドロドロしているだろう。 迷ホラ吹き:なるほど。 媚多眠氏:つまり、常温で固体のアブラは二重結合が少ない脂肪酸が多く、液体のアブラは二重結合が多い脂肪酸が多いってことなんです。いわゆるアブラには、数種類の脂肪酸が入ってますからね。 ぼやき先生:ドコサヘキサエン酸の二重結合の数はわかるかな? 迷ホラ吹き:ヘキサエンの「ヘキサ」が問題ですね。 ぼやき先生:そういうことだな。 媚多眠氏:さっき言った通り「ヘキサ」は6です。 迷ホラ吹き:6個、二重結合があるということですか。EPAより柔らかいってことですね。 ぼやき先生:さっきDHAで頭が良くなるとか言っていたようだが、これが細胞膜に増えると細胞は柔らかくなるってことだな。柔軟な頭になるかも知れん。 迷ホラ吹き:えっ? ってことは、やっぱりマグロを食べると頭が良くなるんですか? ぼやき先生:早とちりはしないほうがイイ。 媚多眠氏:DHAは、体内でEPAからの経路で合成されますし、前にも勉強した通り、二重結合が多いってことは酸化しやすいってことなんですよ。 迷ホラ吹き:そうか、不飽和脂肪酸は酸化しやすいんでしたね。 ぼやき先生:さらに、二重結合が多いほうがいっそう酸化しやすいと言えるんだな。それに、良い話は結構聞くが、実際のところDHAが不足する状態はなかなか考えられないんだな。わざわざDHAのカプセルを飲む必要があるかなってことさ。魚を全く食べない人は問題だがな。 |
EPAとDHA-3 媚多眠氏:それにしてもDHAよりEPAですよね。何と言っても、EPAはプロスタグランディンの原料ですからね。わざわざカプセル飲むんだったらEPAです。 ぼやき先生:ただし、酸化しやすいというリスクを忘れずに、必ずビタミンEをたっぷりとることだ。ところで、EPAやDHAの炭素数や二重結合の数を問題にしたが、前回出てきた脂肪酸の炭素数や二重結合の数は気にならんかな? 迷ホラ吹き:そうですよね。アラキドン酸とジホモガンマリノレン酸。こっちの時はそんな話が出ませんでしたが、どうなんですか? 媚多眠氏:これらは、みんな「エイコサノイド」って言うんです。 迷ホラ吹き:え? エイコラサの井戸? 媚多眠氏:掛け声かけて、井戸でも掘ってなさい! 迷ホラ吹き:ゴメン、もう一度お願いします。 媚多眠氏:エイコサノイドといって、全て炭素数は20個なんです。 ぼやき先生:『なんとかオイド』というのは『なんとかの仲間』といった意味になる。カロチンの仲間をカロチノイド、フラボンの仲間をフラボノイドというのは聞いたことがあるだろう。 迷ホラ吹き:なるほどね。 ぼやき先生:そして、ジホモガンマリノレン酸の二重結合の数は3個、アラキドン酸は4個だ。 媚多眠氏:ジホモガンマリノレン酸は、エイコサトリエン酸とも言えるわけです。 迷ホラ吹き:じゃあ、アラキドン酸はエイコサテトラエン酸ですね。 媚多眠氏:そういうことです。ただし、アルファリノレン酸もエイコサトリエン酸だから、違いが区別できなくてその呼び名は使わないのです。 迷ホラ吹き:何が違うんですか? 媚多眠氏:二重結合の位置ですよ。 ぼやき先生:ちょっと専門的になってしまうが、後学のために説明しておこうか。 媚多眠氏:聞くんじゃなかったって顔してますね。 迷ホラ吹き:そ、そんなことないです、ハイ。 ぼやき先生:脂肪酸というのは炭素が長くつながっているという話をしたが、その端は「メチル基」になっていてもう片方は「カルボキシル基」になっているんだ。 迷ホラ吹き:さっそく出てきましたね。「メチル基」と「カルボキシル基」。 媚多眠氏:メチル基というのは炭素に水素が3つくっついた原子団で、カルボキシル基は炭素に酸素2つと水素1つがくっついたものです。 ぼやき先生:まあ、メチル基の方だけでも覚えておいてくれ。「CH3」だから簡単だ。 迷ホラ吹き:なるほど、「CH3」がメチル基ね。これって、メチルアルコールと関係あります? 媚多眠氏:大ありです。メチル基に「OH」という水酸基がくっつけばメチルアルコールですから。ただし、お酒にはいっているのはエチルアルコール。メチルアルコールは毒ですから、飲んじゃダメですよ! 迷ホラ吹き:わかってますよぉ。目散るで、目がつぶれるってんでしょう。 媚多眠氏:ついでにいっておけば、メチル基とカルボキシル基がくっつくと「酢酸」、つまり、お酢ができます。 ぼやき先生:メチル基という名前をしっかり覚えたようだな。 迷ホラ吹き:はい、なんとか。 |
EPAとDHA-4 ぼやき先生:二重結合がそのメチル基の炭素から数えて、3番目の炭素から始まるのがアルファリノレン酸やEPAやDHAで、そういう脂肪酸を「n-3系列」という。そして6番目の炭素から始まるのが、リノール酸やアラキドン酸やガンマリノレン酸で「n-6系列」と言うんだ。 迷ホラ吹き:「エヌマイナス3系列」に「nマイナス6系列」? 媚多眠氏:3番目というのは、3番目と4番目、6番目はというのは6番目と7番目の炭素が二重結合になっているということです。念のため。 ぼやき先生:ところで、脂肪酸分子は炭素原子が鎖のように長くつながっているといったが、頭と尻尾があるんだ。カルボキシル基とメチル基のことなんだがね。 迷ホラ吹き:メチル基は尻尾なんですか。 ぼやき先生:そういうこと。そして頭、つまりカルボキシル基から順番に番号をつけていくと、メチル基についた番号はその脂肪酸の炭素の数と同じになるだろう。例えばEPAは20番、DHAは22番だ。 迷ホラ吹き:当然そうでしょうねえ。それがどうかしたんですか? 媚多眠氏:「n」の話をしているんですよ。 迷ホラ吹き:「n」は脂肪酸の炭素の数だってことですか? 媚多眠氏:炭素の数であり、メチル基の炭素の番号でもあるということです。 迷ホラ吹き:なるほど、わかりました。「n-3」といえばメチル基から数えて3番目の炭素の番号になるという意味ですね。 ぼやき先生:良く理解してくれたようだな。栄養の話では「n-3系列」「n-6系列」「n-9系列」が出てきて、その比率が話題になることが多いんだ。 媚多眠氏:ここで少し、まとめをしておきましょう。 迷ホラ吹き:お願いします。 媚多眠氏:n-3系列にはアルファリノレン酸、EPA、DHAなどがあり、プロスタグランディンの材料になるのは「EPA」で、魚に多く含まれる。 迷ホラ吹き:はい。 媚多眠氏:n-6系列にはリノール酸、ジホモガンマリノレン酸、アラキドン酸などがあり、プロスタグランディンの材料になるのは「ジホモガンマリノレン酸」と「アラキドン酸」です。 迷ホラ吹き:はいはい。 媚多眠氏:アラキドン酸は動物性食品を食べていれば不足することはないが、ジホモガンマリノレン酸は補給しにくい。 迷ホラ吹き:それにしても脂肪酸って、みなさんお名前が長いですねえ。 |