細胞の骨組み-1 媚多眠氏:前回は、ガン細胞の2つの特徴と、細胞膜の構造についてうかがいました。 迷ホラ吹き:アポトーシスを起こさない不死性と、接触阻止を起こさない異常増殖! 媚多眠氏:おっ、しっかり復習できてますね。リン脂質の二重層は? 迷ホラ吹き:細胞膜の構造ですね。頭と足だけで胴体の無いたくさんのてるてる坊主が、足を向けあってズラズラと並んでいる感じでよかったんですよね。 ぼやき先生:そのとおり。 媚多眠氏:ガン細胞は不細工だということから続いた、細胞膜の話でしたね。 迷ホラ吹き:ガン細胞は、リン脂質の並び自体がデコボコしているってことでしたけど、どうしてデコボコになってしまうんですか? ぼやき先生:そういう疑問が出てこそ、話は進むというものだ。 媚多眠氏:では、今回は細胞の骨組みについて、少し詳しくお話を聞くことにしましょう。 ぼやき先生:しっかり復習できていた通り、細胞膜というのはリン脂質というアブラでできているんだが、これは液体の膜と言えるんだな。 迷ホラ吹き:液体? ぼやき先生:流動性があるということさ。 迷ホラ吹き:膜が流れるってこと? ぼやき先生:シャボン玉のように、液体が膜を作るのは分かるだろう? 迷ホラ吹き:分かります。 媚多眠氏:シャボン玉をよく見ると、膜に流れがあるじゃないですか。 ぼやき先生:細胞膜も同じように流れがあり、そこに挟まっているタンパク質の分子やコレステロールなどが動き回っているんだな。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。 ぼやき先生:そして、シャボン玉のようにワシ達の細胞も、表面張力でかたちを保っているんだ。 迷ホラ吹き:表面張力ぅ!? 媚多眠氏:危なっかしいって思ったんでしょう? 迷ホラ吹き:そりゃ、そうでしょう。シャボン玉はすぐに壊れちゃいますよ。 媚多眠氏:どうぞ、御安心を。細胞は表面張力だけでかたちを保っているわけではありませんので。 ぼやき先生:実は、骨格タンパクというものが二つあるんだな。 迷ホラ吹き:それは、丈夫そうだ。ああ、良かった。 ぼやき先生:一つは「微小管」、もう一つは「微小フィラメント」というんだがね。 迷ホラ吹き:「びしょうかん」に「びしょうフィラメント」ですか。 |
細胞の骨組み-2 媚多眠氏:それぞれ役割が違うんですよね。 ぼやき先生:微小管は「チューブリン」というタンパク質が主成分で、つっかい棒のようなものだ。 迷ホラ吹き:微小管はつっかい棒ですか。そりゃあ、いいや! ぼやき先生:微小フィラメントは「アクチン」という繊維状タンパクが主成分だから「アクチンフィラメント」とも言うんだが、ちょうど金網で内張をしたような感じになっているんだ。 迷ホラ吹き:ふーん。そうすると、金網の内張をつっかい棒で止めているってことですか? ぼやき先生:大ざっぱな言い方だと、そういうことになる。 媚多眠氏:さっき先生がおっしゃいましたが、シャボン玉の膜に流れがあるように、細胞膜にも流れがあります。その細胞膜では、挟まっているタンパク質やらコレステロールなんかが動き回っているというわけです。 ぼやき先生:そのタンパク質で細胞膜のかたちが整っているということが分かれば、なぜガン細胞のかたちがデコボコしているかが、分かるんじゃないかい? 迷ホラ吹き:そのタンパク質が壊れているってことでしょうね! ぼやき先生:そういうことさ。 媚多眠氏:じゃあ、そのタンパク質を壊すものといったら、なんでしょう? 迷ホラ吹き:タンパク質を壊すもの…?。 媚多眠氏:壊すものが無ければ、壊れないですからね。 迷ホラ吹き:壊されるってことは、分解されるってことでしょうかねえ? ぼやき先生:そのとおり。 迷ホラ吹き:タンパク分解酵素って、洗濯の洗剤にも入っていませんか? 媚多眠氏:人間の垢はタンパク質ですから、洗剤にも入っているわけですね。 迷ホラ吹き:そんなものが、僕たちの体の中にあるってことですか? ぼやき先生:まあ、そういうことになる。 迷ホラ吹き:へえー! ぼやき先生:タンパク分解酵素は、からだの至る所に配備されているんだ。 迷ホラ吹き:そんな! からだ中にあったら、からだ中のタンパク質が分解されて身体中がガンになってしまうんじゃないんですか? ぼやき先生:そのとおり。そんなものがのさばっていたら、身体中のタンパク質が壊されてしまい生きていけないだろうな。 迷ホラ吹き:じゃあ、のさばらしてはいないってことですね? 媚多眠氏:そういうことになりますよね。 ぼやき先生:その働きを抑え込むものが、その酵素にくっついているんだな。 迷ホラ吹き:なるほど。 ぼやき先生:それは、タンパク分解酵素の働きを抑え込むタンパク質だから「タンパク分解酵素抑制タンパク」と言うんだ。 |
細胞の骨組み-3 迷ホラ吹き:「タンパク分解酵素」を「抑制するタンパク」だから「タンパク分解酵素抑制タンパク」ですか。 媚多眠氏:そうです。 迷ホラ吹き:働きそのままの名前だから覚えやすくてイイですね。でも、ちょっと長ったらしいか…。 媚多眠氏:前に出てきた「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン」ほどではないでしょう。 迷ホラ吹き:ストレスの話の時に出てきたやつですね。 媚多眠氏:それはないです。略語を使いますから。 ぼやき先生:「タンパク分解酵素抑制タンパク」は、略して「PIタンパク」と言う。 迷ホラ吹き:「ぴーあい・たんぱく」ですか。こりゃあ、随分らくだ! ぼやき先生:Pは「プロテアーゼ」の頭文字、Iは「インヒビター」の頭文字さ。 媚多眠氏:プロテアーゼはタンパク分解酵素のことで、インヒビターは禁止するものとか抑制するものといった意味です。 迷ホラ吹き:なるほどね。 ぼやき先生:PIタンパクは血液の中にも細胞の中にもあるんだ。だから、普通はPIタンパクがくっついて、タンパク分解酵素は働けなくなっているってことさ。 迷ホラ吹き:うまいことできているもんですねえ。 媚多眠氏:そうなんですが、そのPIタンパクが不必要に壊れることがあるから困るわけです。 迷ホラ吹き:PIタンパクが壊れちゃうってことは…? 媚多眠氏:PIタンパクが、タンパク分解酵素から離れてしまうということですね。 迷ホラ吹き:そうなると、タンパク分解酵素が働きだしてしまう?! 媚多眠氏:そういうことになります。 ぼやき先生:不必要に壊れるというのは、生体の合目的性からはずれて動き出すということになり、厄介なことになるということなんだな。 媚多眠氏:では、そのPIタンパクを壊してしまうものはなんでしょう? 迷ホラ吹き:はて? ぼやき先生:今まで勉強してきたことを思い出したら分かるだろう。 迷ホラ吹き:今までの話で、悪いヤツの筆頭といえば「活性酸素」ですね。 ぼやき先生:そういうことだな。 迷ホラ吹き:ここで出てくるってわけですか、活性酸素。 ぼやき先生:活性酸素によって酸化されたPIタンパクは、当然、立体構造が変わってしまう。 迷ホラ吹き:立体構造が変わるってのは、かたちが変わるってことですよね。 媚多眠氏:そうです。かたちが変わるとどうなるでしょう? 迷ホラ吹き:壊れちゃうんですか? 媚多眠氏:アハハハ・・・、かたちが変わるということが、壊れてしまうのとほぼ同じことじゃないですか。 |
細胞の骨組み-4 ぼやき先生:からだの中のいろいろな分子同士の結合は、かたちが重要なんだな。今までピッタリくっついていたもののかたちが変わると、離れてしまうということさ。 媚多眠氏:ジグソーパズルの最後のピースをはめ込むとき、もし、少しでもかたちが変わってしまうとうまくいかないでしょう。そんなイメージを想像したら分かりやすいんじゃないですか? 迷ホラ吹き:なるほどねえ。 ぼやき先生:そういうことになる。 媚多眠氏:すると、抑制がはずれたタンパク分解酵素は活性化し、微小管やアクチンフィラメントを分解してしまうというわけです。 ぼやき先生:骨格タンパクである微小管やアクチンフィラメントが分解された細胞は、さぞやかたちが崩れていることだろう。 媚多眠氏:そのかたちが崩れてデコボコしている細胞が、ガン細胞だというわけなんですね。 迷ホラ吹き:ガン細胞がなぜ不細工なのか、良く分かりました。 媚多眠氏:ガンに対してもタンパク質の重要性や、活性酸素対策が必須だということが理解できることでしょう。 迷ホラ吹き:細胞のかたちを維持するものにしても、酵素の働きを抑えるものにしてもみんなタンパク質ですものネエ。 媚多眠氏:そうです。 迷ホラ吹き:そして、悪玉の活性酸素ですね。活性酸素は前に4種類おぼえましたけど、この時悪さをするのは何か分かっているんですか? ぼやき先生:おそらく、細胞外で発生した寿命の長いやつだろうな。 迷ホラ吹き:寿命の長いやつっていうと「過酸化水素」ですね。 ぼやき先生:過酸化水素は細胞膜を通り抜け自由だから、始末しそこなうと大変なんだ。 媚多眠氏:この時、除去酵素のカタラーゼやイチョウ・フラボノイドなどが役に立つはずです。 迷ホラ吹き:そういうものでやっつけきれなかった過酸化水素が、PIタンパクを壊し、そのため自由になったタンパク分解酵素が骨格タンパクを分解するため細胞のかたちが崩れ、そして、ガンが始まるんですね? ぼやき先生:良く理解しているようだが、最後のガンが始まるというのは違っている。 媚多眠氏:発ガン二段階説の話になりますね。 迷ホラ吹き:まだ、ガンは出来ないんですか!? ぼやき先生:順序があるんだ。ガンは簡単にはつくれないってことさ。 |