フェントン反応-1 迷ホラ吹き:前回は、コレステロールを下げるくすりは身体の中でのユビキノンの合成も邪魔する、なんて話で終わっちゃったいましたね。 媚多眠氏:発ガン二段階説から、DNAの突然変異の話になり、発ガン物質の出す活性酸素の問題に移行して、活性酸素の復習になったのです。 迷ホラ吹き:そうでした。DNAの塩基のグアニンと、最強の活性酸素ヒドロキシル・ラジカルが結合してできる8なんとかってヤツから、新しい言葉が一杯出てきちゃったんですよ。 媚多眠氏:8ヒドロキシ・デオキシ・グアノシン、略して8-OH-dGですね。 ぼやき先生:身体の酸化的ストレス状態を見る指標なんだ。身体がどのくらい活性酸素にやられているかが、おおまかに分かるってことなんだな。 迷ホラ吹き:なるほど。 媚多眠氏:そして、グアニンと結合するヒドロキシル・ラジカルは、除去しそこなった過酸化水素から発生するという話の途中だったわけです。 迷ホラ吹き:過酸化水素が金属イオンと反応すると発生するんでしたよね、ヒドロキシル・ラジカル。フェントン反応でしたっけ? 媚多眠氏:そういうことです。おもに鉄(Fe)イオンや銅(Cu)イオンですね。 迷ホラ吹き:そんなものが身体の中にはウロウロしているってことなんですか? ぼやき先生:タンパク不足の人はね。 媚多眠氏:糖タンパクの問題ですね。 迷ホラ吹き:糖タンパク? タンパク不足の食事はビタミンの働き場を少なくするからダメだってのは、この話の一番最初に聞きましたが、こんなところにも出てくる話なんですか? 媚多眠氏:そうです。ミネラルとタンパク質の関係です。 ぼやき先生:ここの話は現実の食生活にも直接関わる部分があるので、少し詳しく説明しよう。 媚多眠氏:プルーンは抗酸化力があるのに、あまり食べないほうがいいなんて理由も理解できることでしょう。 迷ホラ吹き:あんなに身体にいいって、テレビで言ってるのに? ぼやき先生:過酸化水素が金属イオンと反応するとヒドロキシル・ラジカルが発生するといったが、もう少し正確にいうと『一価銅イオンや二価鉄イオンと反応すると』ということなんだな。 迷ホラ吹き:ありゃ! また出た。銅イオンや鉄イオンに種類があるってことですね!? 媚多眠氏:そうです。銅は一価と二価、鉄は二価と三価があり、どちらもプラスイオンです。 |
フェントン反応-2 迷ホラ吹き:マイナスイオンじゃないから悪いヤツなんだ! 媚多眠氏:はぁ? 迷ホラ吹き:い、いえ、冗談です…。 ぼやき先生:イオンにプラスとマイナスがあるのは確かだが、プラスイオンにもマイナスイオンにも種類がある。その化学種を特定しないでマイナスイオンが身体に良いという最近の風潮は、サッパリ理解出来んな。もっとも、本来は「陽イオン」「陰イオン」というんだがね。 媚多眠氏:テレビなどのマスコミ情報は、絶対鵜のみにしてはいけません。 迷ホラ吹き:そういえば「おもいっきりインチキが一杯あるある大辞典」なんていう人もいますものね。 媚多眠氏:ハハハハ、それは上手い! ぼやき先生:何だい、それは? 媚多眠氏:影響力の強いテレビの健康番組の題名を皮肉ったものですよ。 ぼやき先生:くだらんな。 媚多眠氏:すみません。あまりに上手い皮肉り方だったもので…。 ぼやき先生:で、一価銅イオンや二価鉄イオンの話だ。 媚多眠氏:それらが過酸化水素と反応してヒドロキシル・ラジカルを発生させるということでしたね。 迷ホラ吹き:銅や鉄なんか、なければいいのにね。 媚多眠氏:そうはいきません。これらは生きていくうえでも大切なミネラルですからね。 ぼやき先生:スーパーオキサイドを除去する酵素SODは銅が必要だし、過酸化水素を除去する酵素カタラーゼは鉄を必要としている。鉄が不足すると貧血になるなんて話も聞いたことがあるだろう。 迷ホラ吹き:そうかぁ。 ぼやき先生:イオンの状態でウロウロしなければいいということなんだな。 迷ホラ吹き:なるほど。 ぼやき先生:そこで、出てくるのが「セルロプラスミン」という糖タンパクなんだ。 迷ホラ吹き:セルロプラスミン? 聞いたことあるような…。 媚多眠氏:前回の話でユビキノンと一緒に出てきたじゃありませんか。 迷ホラ吹き:あ、そうか。 ぼやき先生:前回、セルロプラスミンはSODと同じような働きをするといったが、おもに血液や関節液などSODの無いところで働くと思われているんだ。 媚多眠氏:おもなSODは「銅・亜鉛-SOD」と「マンガン-SOD」ですが、これらは細胞内にしか存在しませんからね。 ぼやき先生:セルロプラスミンのさらに役に立つことは、危険物の一価銅イオンをつかまえてくれるってことさ。 媚多眠氏:これが、セルロプラスミンのとても大切な役割の一つです。 迷ホラ吹き:つまり、SODと同じような働きによって活性酸素を退治し、さらに凶悪な一価銅イオンをつかまえることによって活性酸素の発生を抑えているってことですね。 ぼやき先生:そういうことだ。 |
フェントン反応-3 媚多眠氏:タンパク不足の食事をしていると、そのセルロプラスミンも足りなくなる可能性が高いということです。 迷ホラ吹き:セルロプラスミンは、二価鉄イオンはつかまえてくれないのですか? ぼやき先生:残念ながらな。二価鉄イオンをつかまえてくれるものはないんだ。 迷ホラ吹き:ええ!? じゃあ、二価鉄イオンはどうするんですか? ヒドキシル・ラジカルの発生を手をこまねいて待つしかないんですか? ぼやき先生:そうなんだ。三価鉄イオンなら、つかまえてくれるタンパク質はあるんだがな。 媚多眠氏:「トランスフェリン」や「フェリチン」などですね。 迷ホラ吹き:トランスフェリンにフェリチン? でも、危険なのは二価鉄イオンなんでしょう? ぼやき先生:二価鉄イオンが三価鉄イオンにかわればいいだろう? 迷ホラ吹き:そりゃ、そういうことになるんでしょうね? ぼやき先生:願ったりかなったりで、二価鉄イオンはセルロプラスミンに出会うと三価鉄イオンにかえられてしまうんだな。そして、その三価鉄イオンはトランスフェリンやフェリチンがつかまえてくれるということさ。 迷ホラ吹き:へえー、セルロプラスミンってけっこう働き者なんだ。 ぼやき先生:そんなわけだから、身体の中の一価銅イオンや二価鉄イオンは実際、微量しかないんだ。だが、ゼロではないってことなんだな。 媚多眠氏:その、わずかしかない一価銅イオンや二価鉄イオンが、陰険な過酸化水素を最強のヒドロキシル・ラジカルにかえるのがまずいんですね。 ぼやき先生:このとき、銅イオンは酸化されて一価から二価に、鉄イオンは二価から三価になるんだが、ここにビタミンCがあると、還元作用を発揮して二価銅イオンを一価に、三価鉄イオンを二価にもどしてしまうんだ。 迷ホラ吹き:すると? ぼやき先生:当然それらはまた、べつの過酸化水素をヒドロキシル・ラジカルにかえるだろうな。 迷ホラ吹き:ゲゲゲー! 媚多眠氏:この悪循環を断ち切ってくれるのが、セルロプラスミン、トランスフェリン、フェリチンなどのタンパク質なんですね。 迷ホラ吹き:タンパク質が大事だってのはわかりましたけど、ビタミンCが危険物をつくる方向に働くってのが気になりますよ。 ぼやき先生:タンパク不足の食事をしている人や、ビタミンCを1日10g、20gというような大量摂取している人は、ビタミンEやイチョウ・フラボノイドなどのラジカル除去剤もタップリ摂取しないと、活性酸素対策が手抜かりになるということだな。 迷ホラ吹き:全く、一々理由があるものなんですねえ…。 媚多眠氏:これで、だいたいフェントン反応によるヒドロキシル・ラジカル発生の話は終りでしょうが、なぜプルーンが良くないのかなんて話がまだでしたね。 |
フェントン反応-4 迷ホラ吹き:そうでした。 ぼやき先生:プルーンは、鉄が多いらしいじゃないか。 迷ホラ吹き:だから、貧血の人に良いんじゃないんですか? ぼやき先生:ヘムと結合したヘム鉄ならいいんだが、植物に含まれる鉄はイオン化鉄なんだ。 迷ホラ吹き:植物に含まれる鉄ってことは、ほうれん草もそうですか? ぼやき先生:ほうれん草が植物でなければいいんだがな。 媚多眠氏:イオン化鉄を多く摂取すると、体内で二価鉄イオンが生成する確率も大きくなるということですよ。 迷ホラ吹き:なるほど。では、貧血の人はどうしたら良いのですか? ぼやき先生:鉄欠乏性貧血の人は、肉をたくさん食べることだな。肉に含まれる鉄はヘム鉄だからな。それにタンパク質もとれる。貧血の改善は、鉄摂取を考える前に高タンパク食に切り替えることが近道なのさ。 媚多眠氏:あと、ヘモグロビンというものを聞いたことがあるんじゃないですか? 迷ホラ吹き:あります。赤血球に関係があったような…。 媚多眠氏:そうです。赤血球の主成分がヘモグロビンというヘム鉄を含むタンパク質で、これが酸素をつかまえて運搬しているわけです。 ぼやき先生:ついでに言っておけば、肉のヘム鉄はミオグロビンだ。 迷ホラ吹き:ヘモグロビンにミオグロビン。どちらもヘム鉄をを含むタンパク質ということですね。 媚多眠氏:食物として摂取したときの吸収率も、ヘム鉄の方が断然いいんですよ。非ヘム鉄は5%程度ですが、ヘム鉄は23%〜35%だそうです。 ぼやき先生:ところで、活性酸素がらみのコーラの害ってのを知っているかい? 迷ホラ吹き:骨が溶けるってヤツですか? ぼやき先生:それは、リン酸を多く含むものを多くとると体液が酸性側に傾き、それをもとにもどすためにカルシウムが使われるからなんだ。活性酸素は関係無い。 媚多眠氏:他にも悪いことがあるということですね。 ぼやき先生:コーラをがぶ飲みしたあと、激しい運動をして亡くなった学生がいると聞いたことがある。 迷ホラ吹き:ええーっ! ぼやき先生:コーラは銅イオンを多く含むと聞いたことがあるんだが、それが本当なら、コーラの銅イオンと、激しい運動により生成した活性酸素からフェントン反応がおこり、ヒドロキシル・ラジカルが大量発生するという危険が起こる、と説明がつく。 媚多眠氏:ガンの話から思わぬ方向に発展しましたが、とにかくよけいな活性酸素の発生は避けるに越したことはないということです。 ぼやき先生:次回は、またガンの話に戻ろう。 |