獲得免疫・抗原提示-1 媚多眠氏:細胞の「自己の非自己化」というのは、理解できましたか? 迷ホラ吹き:はい。 ぼやき先生:そのリボンの名前は? 迷ホラ吹き:「MHCクラスI分子」です。 ぼやき先生:うむ。 迷ホラ吹き:すると、その細胞はどうなるんでしたっけ? 媚多眠氏:キラーT細胞に殺されます。 迷ホラ吹き:ああ、そうでしたっけね。でも、その自分の細胞が自分でなくなったのを見分けているのはだれですか? 媚多眠氏:だれって、勿論、T細胞ですよ。 ぼやき先生:ここでは、キラーT細胞ということなんだな。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。 ぼやき先生:要するに、キラーT細胞はMHCクラスI分子で自己を確認しているんだが、それだけではなく非自己をもMHCクラスI分子で確認しているんだ。 迷ホラ吹き:キラーT細胞が非自己になった細胞を殺すのは分かりましたけど、なんで自分じゃないウイルスを殺してくれないんですか? 媚多眠氏:ウイルスにはMHCクラスI分子が無いからですよね。 ぼやき先生:そうなんだな。 媚多眠氏:最初からの異物には見向きもしないで、自分が自分でなくなったものだけを攻撃するんですよ。 迷ホラ吹き:まず自分を確認し、自分であるはずの目印で自分なのか自分じゃないのかを再確認する、ってことですネ。なんと面倒くさい。 ぼやき先生:なんのそれしきで。 媚多眠氏:ヘルパーT細胞の助けが必要なんですよ。 迷ホラ吹き:ヘルパーT細胞!? |
獲得免疫・抗原提示-2 ぼやき先生:そういうことなんだな。 媚多眠氏:「もう、僕は自分じゃないから殺して〜!」という感じなのに、キラーT細胞はヘルパーT細胞の指令を待っている状態で、まだ働かないんですね。 ぼやき先生:まあ、本当に殺してもいいのかと、用心深くなっていると思えば良い。 迷ホラ吹き:へぇ〜、ウイルスにやられた細胞は「助けて〜」って言ってるんじゃなくて「殺して〜!」って言ってるのかぁ。で、ヘルパーT細胞の指令ってのは? ぼやき先生:ヘルパーT細胞はマクロファージからの情報によって指令を出すんだ。 迷ホラ吹き:マクロファージの情報? ぼやき先生:マクロファージは全身の組織にいる細胞で、ヘルパーT細胞は血液に乗って全身を流れている。 媚多眠氏:ヘルパーT細胞はリンパ節や脾臓にもいますけど、全身をパトロールしているような感じですよね。 迷ホラ吹き:ふ〜ん、それで? ぼやき先生:マクロファージは自然免疫の時に話した通り、外から入ってきた異物はどんどん食べてしまう。勿論、ウイルスだって食っちまうんだな。 迷ホラ吹き:そりゃ、頼もしいですね。ウイルスを全部食ってくれれば感染しないのに。 媚多眠氏:マクロファージは身体の部分部分で働いているわけだし、そうはうまくいかないんですね。感染しちゃう細胞がいるのは仕方ないんですよ。 ぼやき先生:その代わりと言っちゃなんだが、ウイルスを食べたマクロファージは、そのウイルスを小さく刻んでヘルパーT細胞にそれを掲げるんだ。 媚多眠氏:ちょうど「こんなヤツを捕まえましたよ!」って、ヘルパーT細胞に報告するみたいな感じです。 迷ホラ吹き:へぇ〜、それが情報ってことですネ。 ぼやき先生:するとヘルパーT細胞はそれを確認して『非自己』だと判断すると『抗原』、つまりここでは『ウイルス』を攻撃すべく活動を始めるってわけさ。 迷ホラ吹き:な〜るほど。 ぼやき先生:その通り。 迷ホラ吹き:大食いなだけじゃなくて、ちゃんとお仕事するわけですね〜。働かざるもの食うべからず。立派なもんです! 媚多眠氏:ちょっと違うような・・・。 ぼやき先生:そして、マクロファージがウイルスを食ってそれを小さく刻み、その断片を掲げるときに使われるのが「MHCクラスII分子」なんだ。 迷ホラ吹き:出ましたネ、MHCクラスII。 *抗原提示のメインは《マクロファージ》ではなく《樹状細胞》だということが分かっている。(2016.3) |
獲得免疫・抗原提示-3 ぼやき先生:そして、MHCクラスIIをヘルパーT細胞は「T細胞受容体」で認識するんだな。この二つの分子は、鍵と鍵穴のように特異的に結合する関係になっているんだ。 媚多眠氏:T細胞受容体というのは、T細胞の手みたいなものですね。 ぼやき先生:マクロファージなど、抗原提示細胞のMHCクラスII分子からの異物情報をT細胞受容体で認識したヘルパーT細胞は、「サイトカイン」という化学物質を放出するんだ。 迷ホラ吹き:サイトカイン! ぼやき先生:サイト(cyto)は「細胞の」、カイン(kine)は「作動物質」といった意味、つまりサイトカインは細胞が細胞を作動させるための物質という意味さ。 媚多眠氏:細胞同士の《言葉》みたいなものですよね。勿論インターフェロンはサイトカインの一種です。 迷ホラ吹き:な〜るほど。いろいろな種類のサイトカインがあるってことですネ。 ぼやき先生:そう。ヘルパーT細胞は「インターロイキン2」というサイトカインでキラーT細胞を活性化し、「ガンマインターフェロン」でマクロファージを活性化するんだ。 迷ホラ吹き:ガンマインターフェロン!? ガンマって何よ。 ぼやき先生:インターフェロンにも種類があるってことさ。アルファ、ベータ、ガンマはギリシャ文字のABCってことなんだが、インターフェロンにはアルファ、ベータ、ガンマの3種類があるんだ。 迷ホラ吹き:この際、深くはお聞きしません。 媚多眠氏:そのほうが賢明ですね。種類があるということだけ覚えておいて下さい。 迷ホラ吹き:ふ〜っ・・・、で、インターロイキン2ってのは、サイトカインという物質の一種だということですね。 ぼやき先生:インター(inter)は「〜の間」、ロイキン(leukin)は「白血球の」という意味だ。つまり、サイトカインの中でも白血球同士の情報伝達に使われる物質ということだな。 迷ホラ吹き:前に、免疫では白血球が大活躍と言ってましたね。ってことは、病気の時は、インターロイキンというサイトカインがいっぱい飛び交うんでしょうね。 ぼやき先生:その通り。 迷ホラ吹き:)*o*( 媚多眠氏:そのインターロイキン2を受け取ったキラーT細胞は眠りから覚め、ウイルス感染細胞を殺すということです。 ぼやき先生:そして、抗原を提示したマクロファージはヘルパーT細胞からガンマインターフェロンを受け取り、いっそうパクパクと異物を食べるようになるんだな。 媚多眠氏:ビタミンCはこのインターフェロン合成に関わるものだから、免疫にも重要な栄養素だということが理解できます。 迷ホラ吹き:なるほど、それは分かりましたけど、ちょっと待って下さい。 媚多眠氏:何ですか? |
獲得免疫・抗原提示-4 迷ホラ吹き:まずは、ウイルス感染細胞がMHCクラスIにゴミを付けて「僕じゃないよ〜」ってなってるとき、キラーT細胞はそれを何で確認するんですか? 媚多眠氏:T細胞受容体ですよ。 迷ホラ吹き:ヘルパーさんと同じなんだ。 媚多眠氏:両方ともT細胞ですからね。 ぼやき先生:T細胞受容体にはCD分子という補助分子というものがあって、それが結合の違いに関係しているんだが、面倒な話になるぞ。 迷ホラ吹き:あわわ・・・、そんな面倒な話は、とりあえず、ケケロッコウ。 媚多眠氏:ほとんど全ての細胞にあるMHCクラスIはキラーT細胞、抗原提示細胞など一部の細胞にしかないMHCクラスIIはヘルパーT細胞と結合する、と覚えておいて下さい。 迷ホラ吹き:じゃあ、それはイイとしてもう一つ。 媚多眠氏:そうですよね。 ぼやき先生:広い意味ではそういうことになるだろうな。 媚多眠氏:私はMHCクラスIによるものを消極的抗原提示、MHCクラスIIによるものを積極的抗原提示と考えて、主に後者を抗原提示細胞というんだと理解していました。 ぼやき先生:その理解で良いんじゃないかい。 迷ホラ吹き:なるほど、「もうやられちゃったよ、早く殺してよ、キラーの親分」ってのと「こんなヤツをつかまましたぜ、ヘルパーの旦那」と言ってるのじゃ、だいぶ違いますものね。 媚多眠氏:とにかくウイルスに感染した細胞は、抗原提示細胞とヘルパーT細胞によって活性化されたキラーT細胞に殺されるということです。 迷ホラ吹き:何でマクロファージと言わずに抗原提示細胞というんですか? 媚多眠氏:抗原提示細胞にも種類があるからですよ。 迷ホラ吹き:もしかしたら、B細胞? ぼやき先生:そう、その他、樹状細胞やランゲルハンス細胞なんてのもある。* 迷ホラ吹き:な、なるほど、確かに登場人物が多いな。ロシア文学を凌駕しそうだ・・・。 ぼやき先生:そんなに弱腰になることもなかろうて。 迷ホラ吹き:そ、そうですよね。マクロファージがウイルスを食べてヘルパーさんに報告して、感染しちゃった細胞はヘルパーさんに起こされたキラーさんが殺して、メデタシメデタシってことですものね。 ぼやき先生:そうはいかん。マクロファージで食べきれないウイルスはどうするのかな? 媚多眠氏:今話したばっかりの「B細胞」も「抗体」も、まだ出てきてないじゃないですか。 迷ホラ吹き:そ、そうか。 *食物アレルギーも皮膚からということが分かった。(2016.3) |