I型アレルギー-1 迷ホラ吹き:前回はI型アレルギーを起こす悪いヤツとして「Th2」と「IgE」と「マスト細胞」なんて名前が出てきましたが、面倒な話になるんでしょうかねぇ? ぼやき先生:やさしく解説できればいいんだがな。 媚多眠氏:免疫について易しく書かれたものとしては、安保徹というお医者様の書いた本に人気があるようです。でも、あれを読んでも免疫については殆ど理解できませんね。 迷ホラ吹き:トンデモに引っ掛からないためにってんでしょ? 媚多眠氏:そうですよ。 ぼやき先生:すでに免疫の基礎の話はしたわけだから、思い出しながら聞いてくれれば楽しめること請け合いさ。 迷ホラ吹き:へいへい。 ぼやき先生:では、そのへんの説明からいくとするか。 媚多眠氏:ヘルパーT細胞の1型と2型、そして抗体のIgGとIgEについての理解が進めばスッキリしますよ。 迷ホラ吹き:せっかくだから、復習をかねてほしいなあ。 ぼやき先生:では、ちょっと具体的に考えてみよう。 迷ホラ吹き:はい、お願いします。 ぼやき先生:空気中にはウイルスやほこりやダニなどもうようよしているんだが、例えばうららかな春の朝、杉の花粉を吸い込んだらどうなるかってことだな。 迷ホラ吹き:うららかな春の朝だなんて、状況設定までしてくれるんですか。 媚多眠氏:とにかく、杉の花粉という異物が身体に入ってくるということですよ。 迷ホラ吹き:へいへい、まずは大食いのマクロファージですか? ぼやき先生:そう。マクロファージやB細胞に捕えられて消化されるだろう。 迷ホラ吹き:抗原提示細胞! ぼやき先生:その通り。 消化された断片は、MHCクラスIIでヘルパーT細胞に提示されるというわけだ。 迷ホラ吹き:するとヘルパーさんは様々なサイトカインとかいう物質で、マクロファージにどんどん食べろぉとか、B細胞に抗体発射しろぉってな指令を出すんでしたよね。 媚多眠氏:よく復習できてます! |
I型アレルギー-2 ぼやき先生:そして、ここで問題になるのは、B細胞の発射する抗体の種類ということなんだな。 媚多眠氏:ここでいう種類というのが、抗体のクラスということですね。 ぼやき先生:その時もらった指令が1型のヘルパーT細胞、すなわちTh1からの指令ならB細胞はIgGを発射するんだ。しかし、2型のヘルパーT細胞、すなわちTh2からの指令を受けたB細胞はIgEを発射してしまうのさ。 迷ホラ吹き:ってことは、B細胞はTh1からの指令なのかTh2からの指令なのかが分かるってことですね。 媚多眠氏:そんなバカな。 迷ホラ吹き:だって、Th1とTh2の立体コーゾ−の違いが、とか言いそうだったもので・・・。 媚多眠氏:立体構造の重要性を思い出すのは良いのですが、さっき自分でサイトカインで指令を出すって言ったじゃないですか。 迷ホラ吹き:あ、そうか。 媚多眠氏:サイトカインの種類が違うから分かるんですよ。 ぼやき先生:Th1が出すサイトカインとTh2が出すサイトカインは違うということさ。 迷ホラ吹き:・・・ガンマインターフェロンとか、・・・ですね。 媚多眠氏:覚えているじゃないですか。 ぼやき先生:ガンマインターフェロンというサイトカインを出すのはTh1で、B細胞にIgGを発射させるんだ。 迷ホラ吹き:問題は覚えてない方ですね。あはは・・・。 ぼやき先生:Th2が出すサイトカインはインターロイキン4というものだ。 迷ホラ吹き:インターロイキン! 媚多眠氏:そうなんですが、せっかくですから「4」まで覚えて下さい。 迷ホラ吹き:ってことは他の数字も出てくるんですね。 ぼやき先生:そういうことさ。 迷ホラ吹き:そのインターロイキン10は何をさせるんで? ぼやき先生:Th1細胞の働きを邪魔するのさ。 迷ホラ吹き:あれま、さすが悪役Th2、邪魔するなんて意地の悪いことで。 ぼやき先生:それが、そうとばかりも言えないんだな。 迷ホラ吹き:どうしてですか? 媚多眠氏:ガンマインターフェロンはTh2を邪魔するんですよ。 迷ホラ吹き:なんと! ぼやき先生:Th1が出すガンマインターフェロンはTh2の働きを邪魔し、Th2が出すインターロイキン10はTh1の働きを邪魔するってことなんだ。 迷ホラ吹き:お互い様ってこと? 媚多眠氏:そういうことになりますね。 |
I型アレルギー-3 迷ホラ吹き:同じヘルパーさん同士なのに仲悪いんだ。 ぼやき先生:そのケンカにTh2が勝つと、結果的にB細胞はIgEを作って放出するようになるんだな。 迷ホラ吹き:前回の話で、IgEはマスト細胞にくっつくとかいってましたよね。 媚多眠氏:そうですね。 迷ホラ吹き:IgGは敵の毒を中和したり、美食家マクロファージが敵を食べるのを助けるという良い役割でしたよね。 媚多眠氏:とにかく、IgEはマスト細胞に強く結合するんです。 ぼやき先生:アレルギーを発症する人の場合、杉の花粉を吸い込んだらそれを抗原として認識するIgEが作られて、粘膜に多く存在するマスト細胞に結合するということさ。 媚多眠氏:まずは鼻の粘膜でしょうね。 迷ホラ吹き:それが準備段階なんですね。それで? ぼやき先生:もう一度スギ花粉を吸い込んだとしよう。 迷ホラ吹き:それはやはり、うららかな春の朝ですか? ぼやき先生:その通り。 迷ホラ吹き:スギ花粉は鼻粘膜のIgEでつかまえられますよね? 媚多眠氏:そうです。マスト細胞に結合している二つのIgEにつかまえられます。 ぼやき先生:もう少し正確に言うと、マスト細胞が二つのIgEを使ってスギ花粉のアレルゲンをつかまえたということになる。アレルゲンというのはアレルギーを起こす物質という意味なんだな。 媚多眠氏:そしてそこから悲劇がはじまるわけですね。 迷ホラ吹き:悲劇ぃ!? 媚多眠氏:クシャミ、鼻水、鼻詰まり、ですよ。 ぼやき先生:マスト細胞はIgEでアレルゲンをつかまえると、まずはヒスタミンやセロトニンといった毒性物質を放出するんだ。 媚多眠氏:それらは細い血管を拡張させたり、気管支や腸管などの平滑筋を収縮させます。 迷ホラ吹き:するとどうなるんですか? 媚多眠氏:鼻の血管が拡張すれば血液中の水分がしみ出して粘膜にむくみが起き、鼻がつまりますね。 迷ホラ吹き:おおぉ! クシャミ、鼻水、鼻詰まりの3拍子そろい踏みかぁ!! ぼやき先生:しかも、マスト細胞内ではそれだけではすまない新たな代謝が始まるんだな。 |
I型アレルギー-4 媚多眠氏:ロイコトリエンなどが合成されるということですね。 迷ホラ吹き:ロイコトリエン? ぼやき先生:ロイコは白血球、トリエンは二重結合が3つという意味のエイコサノイドさ。 迷ホラ吹き:アラキドン酸といえばなつかしい。プロスタグランディンの材料じゃないですか。 媚多眠氏:よくぞ覚えていてくれました。 迷ホラ吹き:で、そのロイコトリエンはどんなことを伝達するんですか? ぼやき先生:ヒスタミンと同じようなことさ。 迷ホラ吹き:あれま! ぼやき先生:マスト細胞はヒスタミンをため込んでいて、アレルゲンの刺激がくるとすぐに放出する。 媚多眠氏:これは症状の持続につながるでしょうね。 ぼやき先生:ヒスタミンと同じような働きをするロイコトリエンは「ロイコトリエンC4」なんだが、「ロイコトリエンB4」なんてのもある。 迷ホラ吹き:いったいそいつは何をやらかすんですか? ぼやき先生:好中球や好酸球といった白血球を呼び寄せるんだな。 迷ホラ吹き:好中球や好酸球がやって来るとどうなるんでしょう? 媚多眠氏:好中球や好酸球というのは炎症性白血球と呼ばれます。 迷ホラ吹き:炎症性! ぼやき先生:そう、彼らが集まってくると炎症が慢性化し、周囲の細胞にまでダメージが及ぶってことさ。 迷ホラ吹き:ひえ〜、頭がクラクラしてきそうです。 ぼやき先生:インターロイキン4を覚えているかな? 迷ホラ吹き:2型ヘルパーさんが、B細胞にIgEを発射させるためのサイトカインでしたよね。 ぼやき先生:うむ。 媚多眠氏:炎症を持続させようとするんですね。 ぼやき先生:疫を免れるための免疫の仕組みが、かえってアダになってしまう。 迷ホラ吹き:な、何とかしてくださ〜い! |