粘膜免疫-1 ぼやき先生:1型と2型というヘルパーT細胞同士のケンカに2型、すなわちTh2が勝つと、I型アレルギーになるという前回の話は理解出来たかな? 迷ホラ吹き:Th2はB細胞にIgE抗体を作らせ、そのIgEが肥満細胞にくっついて、肥満細胞はクシャミ・鼻水・鼻詰まりを起こさせるような化学物質を放出して、しかも炎症性の白血球を呼び寄せて免疫戦争を長引かせるってことでした。 媚多眠氏:そうあわてないで。 ぼやき先生:おおまかなアレルギー発症の仕組みが分かれば、分子栄養学での対応も無力というわけではないんだな。 媚多眠氏:もしTh2が勝っても、サプレッサーT細胞がちゃんと抑制してくれれば、アレルギー症状もおさまるはずです。 迷ホラ吹き:アレルギーの人の2型ヘルパーさんは、サプレッサーさんにも勝っちゃうってことですか。 媚多眠氏:それが原因の人もいるでしょうってことですよ。 ぼやき先生:どっちにしても、2型ヘルパーT細胞が異常に強いことがI型アレルギーの原因の一つ、ということは間違いないだろうな。 迷ホラ吹き:で、どうしたらイイんですか? ぼやき先生:まずはアレルゲンが侵入してくる部分を強化すべきだろう。 迷ホラ吹き:花粉症でいえば鼻ってことですか? 媚多眠氏:そうですね。喘息は気管支ということですから、呼吸器ということでしょうか。 ぼやき先生:食物アレルギーもある。 媚多眠氏:消化器ということでしょうか。 迷ホラ吹き:胃腸? 媚多眠氏:鼻や気管支や胃や腸を強化しようってことです。 迷ホラ吹き:鼻や気管支はともかく、胃や腸を強化って胃腸薬でも飲むんですか? 媚多眠氏:な〜に言ってるんですか。分子栄養学の話を聞いているんですよ。 ぼやき先生:呼吸器や消化器などの共通点は、外界と接している部分が粘膜で覆われているということなんだな。 迷ホラ吹き:ガイカイ? ぼやき先生:からだの外という意味さ。 迷ホラ吹き:からだの外と接しているのは皮膚じゃないですか? ぼやき先生:人のからだはチクワみたいなものだ、とも言えるんだな。 迷ホラ吹き:センセ、いくらおでんの季節だからって、チクワですか? |
粘膜免疫-2 媚多眠氏:また日本酒ですか? 迷ホラ吹き:えへへ、加賀の菊姫に『本仕込み純米平成八年度』っていう旨い長期熟成純米酒があるんですよ。 媚多眠氏:それは良いですけど、もう一学習してからですね。 ぼやき先生:おでんで一杯やる時にこれから話す内容でも思い出してくれれば、いっそうおいしくなるだろうって、わはは・・・。 迷ホラ吹き:チクワをつまんで、人のからだを思い出すんですか!? 媚多眠氏:ハイハイ、文句言わずに話を聞きましょう。 ぼやき先生:ウム、からだは口から消化管へとか、鼻から呼吸器へ、そして排出用器官や生殖器へ続くトンネルを持っているだろう。 媚多眠氏:特に口から肛門までは、紆余曲折あるとはいえ一本の管ですね。 迷ホラ吹き:そう言われてみればそうですね。 ぼやき先生:そのトンネルの中は通常だと外からは見えないんだが、外界に接していると言えないかい? 迷ホラ吹き:チクワの穴の中か! ぼやき先生:それで『内なる外』なんて言われる事もあるんだ。 迷ホラ吹き:禅問答みたいだ! ぼやき先生:さっき迷ホラさんは皮膚と言ったが、この『内なる外』と皮膚の違いが粘膜でおおわれているってことなのさ。 迷ホラ吹き:確かにチクワの外側は焼き跡がついてデコボコして茶色っぽいですが、穴の中はきめが整って白くてきれいですね。 ぼやき先生:だろう? 迷ホラ吹き:皮膚と粘膜は、見た目だけでも随分違うってことですか? 媚多眠氏:皮膚は優秀なバリア機能を持った角質層でからだを守っていますが、粘膜は大気や食品成分に直接触れるということです。 ぼやき先生:皮膚のバリア機能は、ウイルスも通さない優秀なものなんだ。しかし、粘膜はそれを持たないため、有用なものを取り入れる一方で不用なものを排除する仕組みを備えているんだな。 媚多眠氏:その不用なものを排除する仕組みに不備が起こるのがまずい、という話ですね。 ぼやき先生:粘膜と聞けば、どんなことを想像するかな? 迷ホラ吹き:そりゃ、ネバネバした膜ってことでしょうかね。 ぼやき先生:そのネバネバしたものが粘液で、粘膜はその粘液におおわれているということなんだ。 迷ホラ吹き:了解。 |
粘膜免疫-3 媚多眠氏:花粉のようなアレルゲンにしてもウイルスにしても、病原体の侵入は粘膜の細胞に取りつくことから始まるわけですよ。 ぼやき先生:粘液はそれに対する物理的バリアーといえるだろう。 迷ホラ吹き:ネッチャヌッチャとさせて、動きを悪くしてやるんですね。 ぼやき先生:それだけではなく、病原体を押し返すような流れを作っているのさ。 迷ホラ吹き:大したもんだぁ。 ぼやき先生:粘膜はそういった物理的バリアーだけでなく、化学的バリアーをも含むんだな。 迷ホラ吹き:恐いですねー、化学兵器ですか? 媚多眠氏:リゾチームやラクトフェリンといった防衛用の生理物質ですね。 迷ホラ吹き:おお、リゾチームは前にも出てきましたね。タンパク分解酵素でしたっけ? ぼやき先生:その通り。リゾチームは大腸菌やサルモネラなど、細菌自体を壊す働きを持つのさ。 迷ホラ吹き:へぇ〜、で、ラクトフェリンは? 媚多眠氏:フェリンという名前から、鉄が関係あると想像がつくでしょう。 迷ホラ吹き:なるほど。鉄といえばトランスフェリンとか、フェリチンですね。 媚多眠氏:そうですね。ラクトはお乳という意味でしょうか。 ぼやき先生:ラクトフェリンは初乳に多いんだな。 迷ホラ吹き:粘液って立派なもんですね。 ぼやき先生:立派なものだと誉めるのなら、粘液自体でなく粘液をつくって分泌する細胞を誉めるべきだろう。 迷ホラ吹き:そりゃ、まあ、確かにそうですね。粘膜細胞とでも言うんですか? 媚多眠氏:粘膜にある細胞という意味では正しいことでしょう。 ぼやき先生:強いて言えば上皮細胞ということになるだろうな。 迷ホラ吹き:上皮組織? 媚多眠氏:からだにはいろいろな種類の細胞がありますが、同じ種類の細胞の集まりを「組織」というんですよ。 ぼやき先生:血液も組織といえるだろう。 迷ホラ吹き:な〜るほど、同じ種類の細胞が集まったものねぇ。 ぼやき先生:ついでに言っておけば、臓器というのはいろいろな組織の集まりといえるだろうな。 媚多眠氏:消化管という臓器の表面は何種類かの上皮細胞が集まった上皮組織になっていて、粘膜はそれで出来てるということですね。 ぼやき先生:その上皮細胞の中に粘液を分泌する細胞があるということなんだが、粘液の主成分は「ムチン(mucin)」と言うんだ。 |
粘膜免疫-4 迷ホラ吹き:そのムチンがネバネバしてるんですね? ぼやき先生:うむ。ムチンは英語なんだが、その日本語訳は「粘素」だから、まあ、粘っこいものといった意味だろう。 媚多眠氏:ムチンは糖タンパク質ですね。 迷ホラ吹き:よく出てきますね、糖タンパク。タンパク質に糖がくっついたものですよね。 媚多眠氏:そうですね。 迷ホラ吹き:糖鎖は細胞からも出ている、なんて話がありましたよね。 ぼやき先生:よくぞ覚えていてくれたな。 迷ホラ吹き:それに何か意味があるんですか? ぼやき先生:粘膜の細胞に取りつこうとするウイルスや細菌などは、その上皮細胞の糖鎖を目指しているんだ。 迷ホラ吹き:それで? ぼやき先生:似たような糖鎖がたくさんあったら、そちらへくっついてしまうだろうって。先に話した物理的バリアーになるってことさ。 迷ホラ吹き:な〜るほどぉ!! 媚多眠氏:糖鎖は細胞の目印でもあるんですよね。 ぼやき先生:そう。だから正確に作られなければいけないんだ。 迷ホラ吹き:細胞にくっついているヤツでも、ムチンのヤツでも糖鎖は大切だってことですね。 媚多眠氏:さっき、糖が鎖のようにつながったものが糖鎖だといいましたが、その基本となる糖はもちろんグルコースなどの単糖です。それらを一個一個つないで作っているわけですね。 ぼやき先生:その正確につなぐ作業を行うものを「糖転移酵素」なんていうんだが、この酵素はビタミンAが無いと働けないんだ。 媚多眠氏:最近、昔の人の提唱した非科学的な話を持ち出して、牛乳を飲むななどと言う人が多くてうんざりしています。 迷ホラ吹き:確か、新谷とかいう偉い胃腸外科の先生も牛乳飲むなって言ってますよ。 ぼやき先生:おおもとは、石塚左玄(1851-1909)とか桜沢如一(1893-1966)などによる日本食養会の教えらしいが、食の陰陽理論などあまりのコジツケに笑えるってものさ。 |