粘膜とIgA-1 媚多眠氏:前回は、外界と接している粘膜の免疫が大切だという話でした。 迷ホラ吹き:アレルゲンという敵が攻めてくる部分ってことですね。細胞の糖鎖だけじゃなくて、粘液・ムチンの糖鎖も大事だってことでしたよね。 媚多眠氏:そうです。ですから、糖鎖作りに関与しているビタミンA不足に気を付けよう、ということなのです。 迷ホラ吹き:そのためには、乳製品はとった方が良いってことですね? ぼやき先生:ありふれた食品では、牛乳やチーズやヨーグルトはお奨めだということさ。一般論として牛乳が良くないなんて人がいたら、まあ怪しい理論の持ち主だと考えていいだろう。 媚多眠氏:タマゴ・牛乳・バナナはおすすめの食品ですよ。値段も安いし。 迷ホラ吹き:了解しました! 媚多眠氏:店頭では、けっこうビタミンA不足を考えたくなるような人に出会いますしね。 迷ホラ吹き:ビタミンAが足りないと糖鎖が作れないってのは分かりましたが、それは結局どういうことですか? 媚多眠氏:丈夫な粘膜ではないってことですよ。 迷ホラ吹き:あはは、そんなことは分かってますってば。 媚多眠氏:それは失礼しました。 ぼやき先生:動物実験では、粘液を作る細胞が減少することが分かっているんだな。 迷ホラ吹き:ってことは、当然、粘液の量が減りますね。 ぼやき先生:そして、その上皮組織は角化してしまうということさ。 媚多眠氏:皮膚での角化は角質層を作るための正常な作用ですが、粘膜での角化は異常事態ですね。 ぼやき先生:そういうことだな。角化するということは、粘膜が乾燥して死んでしまうということなんだ。 迷ホラ吹き:あ〜らら・・・。ってことは、ノドが痛くなりやすいとかセキが出やすい、なんてのはビタミンA不足が考えられるってことでしょうかね。 媚多眠氏:そういうことです。だいぶ前ですけど、迷ホラさんが『オーケストラの練習で指揮者をやると声が嗄れやすいけど、何とかならない?』って相談に来たことがありましたね。 迷ホラ吹き:そうそう、練習指揮者は大きな声を出さなくてはならないし、その後必ずみんなと一杯やるんで、次の日はガラガラ声になっちゃうんですよ。 媚多眠氏:あの時、ビタミンAをたっぷり飲んでもらったじゃないですか。 迷ホラ吹き:あ〜、あれは粘膜を強くするという意味だったんですか。 媚多眠氏:ビタミンAをタップリとる時の副作用防止にタンパク質を必ずしっかりとって、ビタミンEも忘れずとるように言いましたよね。 迷ホラ吹き:そうでしたね。おかげで、全く声嗄れしなくなりましたっけ。ついでに、長年悩んでいた指の湿疹も良くなったし。 |
粘膜とIgA-2 媚多眠氏:ビタミンAは細胞分化にも関わっていますから、皮膚を正常に保つにも大切なんですよ。 ぼやき先生:その時の迷ホラさんは、明らかにタンパクやビタミンAが足りていなかったんだろうな。 迷ホラ吹き:ホント、栄養を侮るなかれってことを実感しましたよ。 ぼやき先生:おどかすわけじゃないんだが、必要なだけの栄養が足りなくて弱ったり角化したままの粘膜は、感染しやすいだけでなくガンにもなりやすいんだな。 迷ホラ吹き:ギョエ〜ッ! 媚多眠氏:その意味で、ガンにビタミンAとも言えるわけですね。 ぼやき先生:うむ。タンパクやビタミンAなどで正常に保たれた粘膜には、免疫細胞が多く存在するんだ。 迷ホラ吹き:粘膜はガイカイと接しているところだから当然なんでしょうね〜。 ぼやき先生:胃から肛門までの消化管粘膜はヒダになっていて、さらにたくさんの絨毛がある。 迷ホラ吹き:じゅうもう? 媚多眠氏:絨毛のおかげで腸の表面積が物凄く広くなって、栄養の吸収などに有利になっているわけですね。その広さはテニスコート二面分とか言われています。 迷ホラ吹き:へぇ〜、ぼくのハラワタはそんなに広げることが出来るんですか! ぼやき先生:そういう広いところで吸収された栄養は、粘膜のすぐ下を走っている毛細血管に移り、門脈を通って肝臓に送られるということさ。 迷ホラ吹き:そういう大事なところだから、異物が入ってこないように免疫細胞がたくさんいるんですね。 媚多眠氏:特に大腸なんてのは、腸内細菌がいっぱいですからね。細菌が作り出す毒素やら細菌自体の死骸やらもあるわけで、抗原の宝庫といえるでしょうね。 迷ホラ吹き:なるほどぉ。細菌自体の死骸って、皮膚でいえば垢みたいなものでしょうかね? 媚多眠氏:そうですね。だから腸の状態を良くすることは、栄養の吸収はもちろん免疫系にとってもすごく大切なことだといえるわけですね。 ぼやき先生:その大事な腸の粘膜では、さっきすぐ下を走っていると言った毛細血管のまわりに多くの免疫細胞が分布しているというわけさ。そして、一番多いのはB細胞なんだな。 媚多眠氏:全身のB細胞の70〜80%は消化管壁に分布している、と聞いたことがあります。 迷ホラ吹き:B細胞っていいますと、抗体を作る細胞ですね。 ぼやき先生:そう。消化管壁のB細胞がつくる抗体がどのクラスか、分かるかな? 迷ホラ吹き:血液の中にはIgGが多いってのはおぼえてるんですがね・・・。 |
粘膜とIgA-3 媚多眠氏:それは、よく覚えてますね。 迷ホラ吹き:IgEが増えるとアレルギーになるけど、IgGはアレルギーを起こさないグッドな抗体だっておぼえたんですよ。 媚多眠氏:それはうまい覚え方ですね。 ぼやき先生:しかし、粘膜に多い抗体がなにかは既に話してあるんだがな。 迷ホラ吹き:あはは・・・、聞いたような聞かないような。もし、センセの話を全部おぼえていたとしても、お酒といっしょに無くなっちゃうことも・・・(^_^;) 媚多眠氏:あれまぁ。IgAですよ。粘膜に大切なビタミンと同じ「A」だから覚えやすいんじゃないですか? 迷ホラ吹き:おお! それはおぼえやすいですね。で、そのIgAは良い抗体なんでしょうね。 ぼやき先生:もちろんさ。一日に産生されるIgAの量は4gくらいだというが、グッドな抗体のIgGは0.034gだという。100倍も違うということなんだな。 媚多眠氏:この時のIgAは、血液中じゃなくて外界へ分泌されるので「分泌型IgA」というのですよね。 ぼやき先生:そう。分泌型IgAは多量体のものもあるが、多くは2個がくっついた二量体になっていて抗原との結合性が増しているんだ。 迷ホラ吹き:抗原を捕まえやすいってことですね。 媚多眠氏:これは病原体を凝集されることにもつながるし、粘液にからめとられやすくもなるので、排除するのにも有利だということですね。 迷ホラ吹き:な〜るほどねぇ・・・。 ぼやき先生:そしてIgAは、他の抗体、たとえばIgEやIgGと違って抗原を激しく排除することはないんだな。 迷ホラ吹き:・・・と、おっしゃいますと? ぼやき先生:アレルギーを起こすIgEや、補体を活性化させて抗原を破壊したり炎症を起こしたり、いかにも免疫といった反応を起こさせるIgGなどに比べると、IgAはずっとおとなしいということさ。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。でも、そんなんでイイんですか? ぼやき先生:その代わりと言っちゃぁなんだが、アレルギーも起こさないし炎症も起こさないのさ。 迷ホラ吹き:なんか、頼りない感じもしますけど・・・。 ぼやき先生:反応はおとなしいんだが、大量に存在して有害な抗原を中和し、細菌などが過剰に増えるのを阻止しているのさ。消化管の常在菌と共存するために、緩やかなバリアーを作っていると考えればいいだろう。 迷ホラ吹き:そういえば前に《IgAは粘膜の防波堤》と聞いたことを思い出しましたよ! 媚多眠氏:それは良かった。とにかくI型アレルギーの人にとっては、特に腸管を中心に粘膜を丈夫にすることは大切なんですよ。 |
粘膜とIgA-4 ぼやき先生:消化管の常在菌という言葉が出たが、ある種の乳酸菌を大量に取るとアレルギーが改善されるなんて報告もあるんだな。 媚多眠氏:死んだ菌でも効果があるというのですよね。フェカリス菌の死菌というのが注目されているようです。 ぼやき先生:メカニズムはまだよく分からないようだが、腸管は体中に免疫の指令を出す最初のところといえるから、腸内環境は大切だということだな。 媚多眠氏:カボチャ種子、オオバコ種子、ベニバナ、スイカズラ花の植物エキスとビフィズス菌を混合したものは「免疫ハーブ」とも呼ばれていて、腸の状態に関与しながら免疫力を上げるようです。この免疫ハーブはウチの店でもけっこう実績がありますよ。漢方薬の効き目を良くしたりもするようですしね。 ぼやき先生:ところで、B細胞に抗体の合成を促すために、一番最初に起こることを覚えているかな? 迷ホラ吹き:最初ってゆ〜と『敵を発見!』ってところですか? ぼやき先生:うむ。 迷ホラ吹き:抗原提示ってことだから、マクロファージやB細胞など抗原提示細胞のお仕事でしたっけね。 ぼやき先生:その抗原提示に重要な働きをしているものに「樹状細胞」なんてのがあるんだな。 迷ホラ吹き:「じゅじょう・さいほう!?」 ぼやき先生:皮膚にいる樹状細胞は「ランゲルハンス細胞」なんていうんだが、抗原提示細胞として名前だけでも覚えておくと良いだろう。 媚多眠氏:樹状細胞は抗原提示に特化した細胞だと聞いたことがあります。 ぼやき先生:うむ。未分化のヘルパーT細胞は樹状細胞からの抗原提示を受けて、Th1やTh2に分化するわけなんだな。 迷ホラ吹き:未分化のヘルパーさんですか・・・。じゃあ、その時アレルギーの人の多くのヘルパーさんは、Th2に分化しちゃってるってことでしょうか? ぼやき先生:そういうことだろうな。どちらになるかはその分化の時に存在するサイトカインによるってことなんだ。 迷ホラ吹き:またまた面倒なインターロイキンですか? ぼやき先生:御明答。インターロイキン12が在ればTh1に分化するんだが、インターロイキン4が在るとTh2に分化するんだ。 迷ホラ吹き:アレルギーの人にとってインターロイキン12が必要だってことですね。そいつはどなたが作るんですか? ぼやき先生:樹状細胞やマクロファージさ。 迷ホラ吹き:あらら、抗原提示細胞じゃないですか! 媚多眠氏:樹状細胞やマクロファージに、インターロイキン12をしっかり作ってもらえるような栄養条件が大切だということになりますね。 |