静岡の純米酒と共に-1 ・・・今日はいつもの喫茶店ではなく、迷ホラ吹きさんちに集まった3人。迷ホラ吹きさんの奥様は既に厨房の中。呑ん兵衛の迷ホラ吹きさんには、何かたくらみがあるようで・・・。 媚多眠氏:免疫の仕組みとI型アレルギーについて勉強してきたわけですが、サラっと復習していきましょうかね。 迷ホラ吹き:いいですね〜。 ぼやき先生:専門用語ってのは、小説やアニメなど、物語の中の登場人物の名前のようなものだろう。覚えてもらわないと話が進まないってものなんだな。 迷ホラ吹き:先生は、覚えるためには何度も思い出せって言いましたよね。 ぼやき先生:わっはっは、その通り。こりゃ、一本取られたな。 迷ホラ吹き:えへ、一本取ったところで、たまには一杯やりながらなんてどうですか? 媚多眠氏:ええ! お酒ですか? 最初からそのつもりで誘ったんですね。 迷ホラ吹き:えへへ・・・。 ぼやき先生:まあ、たまにはよかろう。 迷ホラ吹き:やった! ぼくの妻のネギたっぷりの焼き鳥はけっこういけるんですよ。 媚多眠氏:日本酒ですか? 迷ホラ吹き:そうですけど、やっぱ、トリアエズビール、でしょ! ・・・「ビール、ビール♪」と呟きながらテキパキと支度をする迷ホラ吹きさん・・・。 媚多眠氏:おっ、ヱビスビールですね。 迷ホラ吹き:ぼくは30年前からヱビスです! ぼやき先生:今でこそ麦芽とホップだけのビールはいろいろ出ているが、昔はほとんどヱビスビールだけだったんだな。 迷ホラ吹き:米やコーンやスターチなんか使ったビールはいけませんよ。 ぼやき先生:さて、酔っぱらう前に少しだけでも復習をしてもらおうじゃないかい? 迷ホラ吹き:は〜い、人間のからだはおでんのチクワみたいなものです。 媚多眠氏:あはは、いきなりチクワを思い出しましたか。 迷ホラ吹き:もう、免疫と酒って聞いたらチクワですって。 媚多眠氏:何かハチャメチャな気もしますが・・・。 迷ホラ吹き:チクワの内側は「内なる外」の粘膜で出来ていて、皮膚と違って角質がなくて、その代わり粘膜は粘液でおおわれています。 |
静岡の純米酒と共に-2 媚多眠氏:あ〜ら、立派なものです。 迷ホラ吹き:その粘液にはムチンやラクトフェリンのほかIgAなんて抗体が多く含まれていて、アレルギー物質の侵入を防いでいます。 ぼやき先生:ウム、よく復習出来ておる。 媚多眠氏:目の前にお酒があると、スムーズに思い出せるんでしょうかね? 迷ホラ吹き:やるときゃ、やりまっせ〜。 ぼやき先生:手回しの良いこった。 媚多眠氏:大好きな《菊姫》じゃないんですか? 迷ホラ吹き:はい。実は、静岡の酒なんて旨くないと思っていて、地元にも関わらずず〜っと避けていたんです。でも、そんなことなかったんですね。 ぼやき先生:確かに、温暖で米どころでもない静岡から旨い酒、というのは想像しにくいかも知れんな。 迷ホラ吹き:そうなんですよ。でも、そんなこと関係ないんですよね。 ぼやき先生:なるほどな。 媚多眠氏:問題は水でしょうか? 迷ホラ吹き:さすが媚多眠さん。水は大量に必要だし、移動が大変ですからね。 媚多眠氏:水道水を使えばいいんじゃないですか? 迷ホラ吹き:そういう蔵もあるようですが・・・。 ぼやき先生:昔の東京の水のように、もとの水質が悪ければ話にならんことは想像がつくな。 媚多眠氏:それはそうですね。 迷ホラ吹き:で、今日は藤枝の《志太泉・しだいずみ》です。由比の《正雪・しょうせつ》や掛川の《開運・かいうん》、袋井の《國香・こっこう》も旨かったんですがね。 ぼやき先生:まあ、ずいぶん呑んだものだな。研究熱心なこった。 迷ホラ吹き:えへへ・・・。この《志太泉》は兵庫県産山田錦を吟醸酒並みに60%まで精米し、静岡酵母で醸した純米酒なんですよ。 媚多眠氏:兵庫県産山田錦というのは、日本酒用のお米の最高峰ですね。 迷ホラ吹き:よくご存知で。 媚多眠氏:確か『酒造好適米』とかいって、食べておいしいお米より粒が大きくて、真ん中のデンプン質の部分だけを使いたいから、たくさん精米するんですよね。 迷ホラ吹き:そうなんです。外側にはタンパク質やら脂質が多くて、酒造りには向かないんですね。 ぼやき先生:栄養分が邪魔になるということだな。 |
静岡の純米酒と共に-3 迷ホラ吹き:ああ、そういうことになりますね。 媚多眠氏:では呑む前の必需品、このタンパクの錠剤と漢方薬を飲んでおきましょう。 迷ホラ吹き:これこれ、このタンパクの錠剤は酒呑みの必需品ですね。・・・ハイハイ、ぐい呑み持って、ま、ま、一杯どうぞ。 ・・・トクトクトク・・・ 媚多眠氏:・・・、旨いですね。 迷ホラ吹き:よくぞ気付いてくれました。 媚多眠氏:両方ともエステル化合物ですが、よくそんな専門用語を覚えてますね。 迷ホラ吹き:われながらビックリです。好きなものに関係すると覚えるもんですね〜。 媚多眠氏:確か、酢酸イソアミルってのはバナナのような香りといいますが、このお酒はそれほどでもないですね。 迷ホラ吹き:そうなんです。 媚多眠氏:本当ですね。押しつけがましくない香りとなめらかな口当たりの中に、コクもあります。 迷ホラ吹き:軽やかに米の旨みを生かしてるなって感じがイイんですよ。あぁ、旨い。 ぼやき先生:確かに旨いかもしれんが、免疫とアレルギーに密接な関係のある粘膜は、このアルコールで傷むんだな。 迷ホラ吹き:センセ! せっかく幸せな気分を味わってるのにぃ。 ぼやき先生:わっはっは、酔っぱらう前にもう一勉強ってところだな。 媚多眠氏:アルコールは水にもあぶらにも溶けますから、粘膜の細胞を傷つけやすそうな感じは分かります。 ぼやき先生:そういうことでなく、吸収された後のことをいっているのさ。 媚多眠氏:そういえば、通常の食べ物と違ってアルコールは胃からも吸収されますね。 ぼやき先生:そう、粘液という免疫バリアーにはばまれることなく粘膜細胞の中に入っていく、ということなんだな。 迷ホラ吹き:粘膜の防波堤も関係ないってことですか? ぼやき先生:そういうこと。 媚多眠氏:アルコール分子は水を引き寄せる力がありますものね。 迷ホラ吹き:へぇ〜、するとどうなるんで? ぼやき先生:水が減った細胞では真っ当な仕事はできんだろうな。 媚多眠氏:粘膜の細胞だったら、粘液の産生量が減るでしょうね。 迷ホラ吹き:確か、粘液が減ると角質化しちゃうんですよね。皮膚の角質化は良いけど粘膜はダメだって。 ぼやき先生:そういうこと。 |
静岡の純米酒と共に-4 迷ホラ吹き:そりゃ、まずそうですね。 媚多眠氏:そういう状態を萎縮性胃炎というんじゃないですか? 迷ホラ吹き:いしゅくせい・いえん! ぼやき先生:この時の粘膜細胞は前ガン状態になっていて、胃ガンが生じやすいってことなんだな。 迷ホラ吹き:あ〜れ〜〜! アレルギーどころではないですね。 ぼやき先生:萎縮性胃炎は年寄りに多いんだが、アルコールの脱水作用は粘膜細胞の機能を低下させることに間違いはないんだな。 媚多眠氏:そうなれば当然、アレルギー予防の最前線が崩されるってわけですね。 迷ホラ吹き:ふ〜ん、アルコールといえば肝臓だと思ってましたがねぇ。 ぼやき先生:もちろん呑み過ぎは、肝臓や膵臓がやられる確率が高くなるだろう。ここでは粘膜の話にしぼってみたということさ。 迷ホラ吹き:お〜〜、焼き鳥がきたきた。鳥肉は良いタンパク質ですよね? 媚多眠氏:プロテインスコアは90近くあるし、タンパク含有量もそこそこだから合格ですね。後は粘膜ビタミンとしてA、B2、B6、Cを摂取しておきましょう。 ぼやき先生:さ〜て、「ウチなる外」でなく本当の内、体内でのアレルギーに対する対策はどうしたら良いかな? 迷ホラ吹き:確か、ほっときゃTh2が強くなり過ぎちゃうっていう、Th1とTh2のバランスの話ですか? インターロイキン12が大事でしたっけ? 媚多眠氏:そうですね。 ぼやき先生:腸管パイエル板の樹状細胞が産生するインターロイキン12は、食物アレルギーを抑えるのに必須だという最近の報告があるんだな。 迷ホラ吹き:で、1型ヘルパーさんに頑張ってもらうためには、やっぱビタミンCでしたよね。そうそう、インターフェロンを頑張らせるとかいう免疫ハーブにも頼っちゃいましょうよ。 媚多眠氏:先生、こりゃもう、今日はダメですな。我々も頂きましょうか。 ぼやき先生:う〜む、人気がないという日本酒の応援団になるのも悪くはないか。 迷ホラ吹き:さすがセンセ、良いこと言いますね。 ぼやき先生:蒸した白米のデンプンを麹(こうじ)の酵素で糖化すると同時に、その糖を酵母でアルコール発酵させるのが「並行複発酵」なんだが、開放状態での仕込みにも関わらず特別な殺菌工程もなく、段仕込みによリ醸される日本酒醸造技術の高さは世界に誇れるものなんだ。 迷ホラ吹き:イイぞ、センセ。日本人よ、旨い純米酒を飲もう〜〜! ぼやき先生:では、しっかりした造りの静岡の純米酒をじっくり堪能するとしようか。 |