メタボリック・シンドローム-1 媚多眠氏:先日はおいしい純米酒をタップリとご馳走になり、有難うございました。 迷ホラ吹き:いえいえ、どういたしまして。 媚多眠氏:最後に頂いた《杉錦》って酒は、酸味が利いて個性的でしたね。でも、呑み飽きしない旨酒って感じでした。 迷ホラ吹き:《杉錦》も《志太泉》と同じく藤枝の酒です。この間のは《杉錦・八百萬・山廃純米》ってのですが、気に入ってもらって良かったです。 ぼやき先生:さ〜て、酒の話はそのくらいにして、今回は何を勉強するのかな。 媚多眠氏:とりあえず免疫とアレルギーの話は終わりにして、生活習慣病の原因の大元ともいえる内臓脂肪の話なんかどうでしょう? 迷ホラ吹き:前にチョロッと聞いた、最近話題のメタボの話ですか? 媚多眠氏:はい。メタボリック・シンドロームです。メタボリックの意味は『代謝』、シンドロームは『症候群』です。 ぼやき先生:基本的にはお腹まわりが太くなると危ないって話なんだが、見栄えだけの問題ではないところが面倒なんだな。 迷ホラ吹き:媚多眠さん、お腹、ちょっと来てないですか? 媚多眠氏:結婚して約20年なんですが、その間に約10キロ太ってしまいました。明らかに運動不足です。 迷ホラ吹き:ぼくも気を付けないといけないでしょうかね。 媚多眠氏:そりゃ、そうでしょう。だって、おいしい純米酒を毎日飲んでるんですから。 迷ホラ吹き:えへへ、そうなんですよ。 ぼやき先生:これこれ、また酒の話をしたがる。 迷ホラ吹き:そうそう、酒だけ呑んでりゃ、太りませんよね。 ぼやき先生:うむ。身体を壊すかもしれんがな。 迷ホラ吹き:センセの意地悪! 媚多眠氏:だから、栄養のことなど勉強しているんじゃないですか。 迷ホラ吹き:ハイ、そうでした。 ぼやき先生:では、以前話したことの繰返しになるかもしれんが、メタボリック・シンドロームを最上流として、ドミノ倒しのように連なる症状や病気の話をしていこう。 迷ホラ吹き:内臓脂肪が多くたまり過ぎるのが良くないってことですけど、だいたい、内臓脂肪ってのは皮下脂肪とは違うって話でしたよね。 |
メタボリック・シンドローム-2 媚多眠氏:皮下脂肪はお腹の表面のほうにあるわけで、つまむことが出来ますね。でも、内臓脂肪は見た目だけでは分かりません。腹腔内にたまりますから。 迷ホラ吹き:ふくこうない? 媚多眠氏:要するに腸管など、内臓のまわりということですね。 迷ホラ吹き:それに気付かず、さらにほっとくと? 媚多眠氏:動脈硬化が促進される確率は、ぐんと上がるでしょうね。 迷ホラ吹き:動脈硬化が進めば脳卒中ですね! 媚多眠氏:そうです。脳卒中や心疾患など、致命的な病気を起こしやすくなります。 ぼやき先生:最後のほうは、いろいろな原因がからんでくるんだ。しかし、その最上流に内臓脂肪の増加があるから気をつけろ、ということなんだな。 媚多眠氏:その内臓脂肪増加の原因の1つは食事内容の悪さ、そしてもう1つは運動不足。この2つに集約されるといっていいでしょう。 ぼやき先生:食事内容の悪さというのは、カロリーは充分にとれているのに、タンパクやビタミンなどの不足があるってことなんだな。 迷ホラ吹き:栄養不足のカロリーオーバーってことか。 媚多眠氏:運動については、有酸素運動が良いようですね。 ぼやき先生:筋肉を増やすための筋力トレーニングは、基礎代謝を上げるのに有効だろう。しかし、内臓脂肪に対しては有酸素運動が有効なんだな。 迷ホラ吹き:さっき、ドミノ倒しのようになんておっしゃいましたが・・・。 媚多眠氏:昔は高血圧症も高血糖も高脂血症も、別々の原因で発症すると考えられていたんです。 迷ホラ吹き:それで、ドミノ倒しのように『内臓脂肪蓄積 → 高血圧・高血糖・高脂血症 → 動脈硬化 → 脳卒中・心疾患』となるんですね。 媚多眠氏:そうですね。 ぼやき先生:皮下脂肪と内臓脂肪はたまる場所が違うだけではないんだ。 迷ホラ吹き:肝臓がどうのこうのって話だったような・・・。 媚多眠氏:飲ん兵衛だから、肝臓が関係するってことだけは記憶していたんですね。 迷ホラ吹き:えへへ、そのようです。 ぼやき先生:脂肪細胞にたまっている脂肪ってのは、いわゆる「中性脂肪」だ。「トリグリセリド」ともいう。 媚多眠氏:グリセリンともいうグリセロールは、3価のアルコールなんです。そこに脂肪酸が3つくっついて中和されたのが、中性脂肪です。だから「3」の「トリ」なのです。 迷ホラ吹き:な〜るほど。 |
メタボリック・シンドローム-3 ぼやき先生:その通り。脂肪酸はわざわざ「遊離脂肪酸」なんていうんだがね。 媚多眠氏:その分解されたグリセロールと遊離脂肪酸が、皮下脂肪由来のものは循環系の血流に乗って全身を回り、筋肉で使われるんです。 迷ホラ吹き:ところがどっこい、内臓脂肪由来のものは肝臓へ行くってんですね。 媚多眠氏:そうです。門脈系という肝臓への血流に乗って、直接に肝臓へ入るんです。 迷ホラ吹き:するとどうなるんですか? ぼやき先生:肝細胞には、グリセロールを積極的に取り込むチャネルがあるんだ。 迷ホラ吹き:チャネル? ぼやき先生:細胞膜には物質を通過させるためのタンパク質が挟まっているんだが、特定の物質を濃度勾配によって移動させるタンパクがチャネルタンパクなんだな。 媚多眠氏:肝臓の細胞にはグリセロールを通過させるチャネルがあるということで、グリセロールがたくさんあれば、それだけたくさん取り込むということです。 迷ホラ吹き:じゃあ、肝臓の細胞に取り込まれたグリセロールはどうなるんですか? ぼやき先生:グルコース、つまりブドウ糖に変換して血中へ放出されるのさ。 媚多眠氏:内臓脂肪が多い人は、その反応が多いということですね。 迷ホラ吹き:血液中のブドウ糖が多くなるってことですか? 媚多眠氏:そういうことになります。 迷ホラ吹き:それって、もしかしたら「高血糖」!? ぼやき先生:そういうことになるだろう。 迷ホラ吹き:な〜るほど。糖尿病のモトかぁ・・・。 媚多眠氏:では、もう一つの分解物、遊離脂肪酸は肝臓でどうなるのか、ということですね。 ぼやき先生:肝臓へ入った遊離脂肪酸は、新たな脂肪合成の材料となったり、リポタンパクの合成を進めるシグナル分子になったりするんだ。 迷ホラ吹き:ぶい・える・でぃ・える? LDLってのは比重が低い脂タンパクでしたよね。確か、最初のLは低いという意味の「LOW」の頭文字。 媚多眠氏:素晴らしい。よく覚えていました。そのLDLに「VERY」のVがついたものです。 迷ホラ吹き:じゃあ、とても低い比重の脂タンパク? ぼやき先生:そう。脂はリピッドだから、超低比重リポタンパクのことだな。 迷ホラ吹き:比重が低いってのは、そのタンパク質が脂をたくさん含んでいて軽くなるからだって話でしたよね。 媚多眠氏:その通りです。VLDLは、中性脂肪という脂をたくさん含むリポタンパクだ、ということなんですよ。 ぼやき先生:血漿の90%は水なんだな。水に溶けないコレステロールや中性脂肪は、そのままでは運搬できん。 迷ホラ吹き:アポ・リポタンパク? |
メタボリック・シンドローム-4 媚多眠氏:リポタンパクのタンパク部分を、アポタンパクというんですよ。 迷ホラ吹き:ってことは、コレステロールや中性脂肪などの脂成分を水に溶ける「アポタンパク」とやらで包んで出来たのが「リポタンパク」ってことですか? ぼやき先生:リン脂質やレシチンなども含まれるんだが、概ねその通り。 迷ホラ吹き:じゃあ、もしかしたら、VLDLって中性脂肪の運搬役? 媚多眠氏:LDLとHDLをコレステロールの運搬役といえば、VLDLは中性脂肪の運搬役といえますね。 迷ホラ吹き:で、そのVLDLはどうなるんですか? ぼやき先生:肝臓で合成されたVLDLは血中を流れていき、毛細血管壁を作っている内皮細胞のところで「LPL」という酵素の働きを受けるんだな。 迷ホラ吹き:今度はLPLですか。 ぼやき先生:「リポタンパクリパーゼ」のことさ。 迷ホラ吹き:リポ・タンパク・リパーゼ! ぼやき先生:最初と最後のLは問題ないだろう。真ん中のPはプロテインのことさ。 媚多眠氏:リパーゼは脂質分解酵素ですね。 ぼやき先生:VLDLは、そのLPLや中性脂肪分解酵素の働きでLDLに変わるんだ。 迷ホラ吹き:へぇ〜、中性脂肪の運搬役からコレステロールの運搬役になっちゃうんですか。 ぼやき先生:うむ。 迷ホラ吹き:な〜るほど。 媚多眠氏:そのLDL内のコレステロールは細胞に取り込まれて、いろいろな役に立つことは前に勉強しましたね。 迷ホラ吹き:ホルモンやビタミンDの原料になったり、細胞膜の成分になって細胞膜を丈夫にしたりするんでしたよね。 媚多眠氏:そうですね。コレステロールは身体にとって大切な栄養です。 ぼやき先生:そして、取り出された中性脂肪はエネルギー源として使われるというわけさ。 媚多眠氏:不用なコレステロールはHDLが回収して肝臓に運ばれるんですが、あまったLDLも肝臓に運ばれて処理されます。 ぼやき先生:善玉と呼ばれるHDLは肝臓や小腸でつくられるんだが、LPLの働きでもつくられるらしいんだな。 迷ホラ吹き:LPLって、ミラクルに働いているんですね! ぼやき先生:内臓脂肪の量が適切ならば、ということなんだがね。 |