悪玉リポ蛋白-1 媚多眠氏:前回は、内臓脂肪由来のグリセロールと脂肪酸が肝臓へいく、と言う話をお聞きしました。 迷ホラ吹き:肝臓へ行くグリセロールが多くなると、血糖値が上がるんでしたよね。 媚多眠氏:そうです。 迷ホラ吹き:もう一つの内臓脂肪由来産物の脂肪酸は「VLDL」になって血液中に流されるって話だったんですが、「LPL」ってなミラクル酵素が頼もしい働きをしてくれるってことでした。 ぼやき先生:内臓脂肪の量が多過ぎなければって条件がつくんだがな。 迷ホラ吹き:そういえば、そんなことおっしゃってましたね。 媚多眠氏:では、今回は内臓脂肪由来の脂肪酸がたくさん肝臓に流れ込むとどうなるかをお聞きしていきましょう。 ぼやき先生:過剰な内臓脂肪が、いかに代謝を邪魔するかが分かってくるんだな。 迷ホラ吹き:代謝を邪魔、ですか。この健康談義の最初の頃『生命の実態は代謝だ。』なんて言葉が出たのを思い出します。代謝が止まるってのは死ぬってことですしね。話の重要性が身にしみます。 ぼやき先生:うむ。 迷ホラ吹き:その話も新鮮でした。 媚多眠氏:中性脂肪やコレステロールが、アポタンパクと結合してリポタンパクになるという話ですか? 迷ホラ吹き:そうそう、それです。 ぼやき先生:そいつは良かった。けっこう重要なことなんだな。 媚多眠氏:それで、さっきの話です。 迷ホラ吹き:はい。内臓脂肪からの脂肪酸が多いと、VLDLもたくさん合成されそうですね。がんばれミラクルLPLって応援したくなります!! ぼやき先生:ところがなんと、血中のVLDLが増えるとLPL活性が落ちるというんだな。 |
悪玉リポ蛋白-2 迷ホラ吹き:えぇ〜! LPL活性が落ちるって、ミラクル酵素・LPLの働きが悪くなるって意味ですよね。 媚多眠氏:そうです。 迷ホラ吹き:VLDLが肝臓からたくさん流れてくるのに、LPLがまともに働かないってんじゃ、血液中のVLDLはどんどんたまる一方じゃないですか。なんか、いかにも悪いことが起こりそうですね〜。 媚多眠氏:その悪いことの一つは、「小型LDL」が増えるということです。 迷ホラ吹き:小型LDL? 媚多眠氏:通常のLDLより小さくて重いリポタンパクですね。これが悪いヤツなんですよ。 ぼやき先生:細胞のLDL受容体に対する親和性が、通常のLDLに比べて低いんだな。 迷ホラ吹き:それは細胞に取り込まれにくく、利用されにくいってことですね。 媚多眠氏:そうですね。肝臓でも処理されにくいので、いっそう血液中に留まりやすいってことにもなります。 ぼやき先生:そして、粒子サイズが小さいので血管内皮細胞の隙間を通過しやすく、動脈壁に取り込まれやすいんだ。 迷ホラ吹き:すると、どうなるんですか? ぼやき先生:炎症が起こりやすくなるんだな。 迷ホラ吹き:それは動脈硬化になりそうですね。 媚多眠氏:さらに、小型LDL中のビタミンEやコエンザイムQの量は少ないと聞いたことがあります。 迷ホラ吹き:ビタミンEやコエンザイムQといえば、脂溶性の抗酸化物質ですね。それが少ないってことは、酸化しやすいってこと? 媚多眠氏:そういうことになりますね。酸化した「変成LDL」が動脈硬化の原因だって話はだいぶ前にうかがいましたよね。 迷ホラ吹き:コレステロール自体は多くても悪さをしないけど、それが酸化すると血管壁にくっついて動脈硬化の原因になるなんて話がありましたっけね。 ぼやき先生:ビタミンEやコエンザイムQをタップリ摂るということは、こういうところでも意味が出てくるというわけさ。 媚多眠氏:水溶性とはいえ、イチョウ・フラボノイドにも抗酸化には期待ができます。リポタンパクは水に溶けているわけですからね。 ぼやき先生:さて、ここまで勉強してくれば認識を新たにすることも可能だろう。 迷ホラ吹き:どういうことですか? ぼやき先生:リポタンパクとコレステロールや中性脂肪を分別して考えてみよう、ということさ。 媚多眠氏:この間、理解出来てきたなんて言ってましたから大丈夫でしょうが、リポタンパクというのはHDL、LDL、VLDL、小型LDLなどのことですよ。 迷ホラ吹き:ハイハイ、分かってますよ〜。コレステロールや中性脂肪は水に溶けないので、血液中ではリポタンパクという形で存在しているってことでしょ。 |
悪玉リポ蛋白-3 ぼやき先生:その通り。 迷ホラ吹き:・・・あれっ・・・? 媚多眠氏:どうしましたか? 迷ホラ吹き:世間ではよくHDLを善玉コレステロールといい、LDLを悪玉コレステロールといいますけど、入っているコレステロールの種類が違うってことですか? 媚多眠氏:いいえ、コレステロールという物質は、どれも同じですよ。 ぼやき先生:そういう疑問が出ると言うことは、しっかり認識してくれた証拠かな。善玉・悪玉という二元論自体に問題があるんだが、まあ、強いていえばコレステロールではなく「善玉リポタンパク」と「悪玉リポタンパク」があると考えた方が分かりやすいだろう。 媚多眠氏:要するに、コレステロール自体には善玉も悪玉もないってことですね。 迷ホラ吹き:やっぱり、そうですよね。だいたい、悪玉って言うんならLDLじゃなくて「酸化LDL」ですものね。 ぼやき先生:では、なぜ酸化LDLが悪玉かってことだな。 迷ホラ吹き:動脈硬化の元になるからでしょう? ぼやき先生:なぜ動脈硬化の元になるのかってことさ。 迷ホラ吹き:マクロファージがパクパク食べて、世界の終末みたいな泡沫細胞になって、動脈にくっつくんでしたっけ? 媚多眠氏:勉強が見事に身に付いてますねー。単なる飲ん兵衛じゃありませんね! 純米酒パワーか。イヨォ、飲ん兵衛の鑑!! 迷ホラ吹き:イヤ、まあ、その、このくらい、大したことないっすよ。えへへ・・・。 ぼやき先生:では、飲ん兵衛の鑑さんに、純米酒パワーとやらで悪玉リポタンパクの定義でもしてもらおうか。 迷ホラ吹き:えぇ? ま〜た、センセったら、そんな意地悪を言う・・・。 媚多眠氏:呑まなきゃ、定義できませんか? 迷ホラ吹き:媚多眠さんまでそんなことを・・・。 媚多眠氏:ご自身の言葉のなかに答えはありましたからね。 迷ホラ吹き:ホントですか!? ぼやき先生:泡沫細胞は、どうしてできたかってことだな。 迷ホラ吹き:確か、酸化LDLをパクパク食べるマクロファージの成れの果て、ですよね。 ぼやき先生:それが正解さ。 迷ホラ吹き:わーぉ! 媚多眠氏:ひらめきましたか? 迷ホラ吹き:マクロファージに食べられるから、悪玉なんですね! ぼやき先生:その通り。『悪玉リポタンパクとは、マクロファージの餌になるリポタンパクだ』といえるんじゃなかろうかってことなんだな。 迷ホラ吹き:じゃあ、HDLや酸化されてないLDLはマクロファージに食べられることはないってことなんですね。 |
悪玉リポ蛋白-4 媚多眠氏:そういうことですね。小型LDLを悪いヤツといったのは、マクロファージの餌になりやすいという意味だったのですよ。 迷ホラ吹き:小型LDLってのは、そのままでマクロファージに食べられちゃうんですか? ぼやき先生:詳しいことは知らん。しかし、血管壁に入り込みやすくとても酸化しやすいわけだから、マクロファージが見過ごすことはないだろうな。 迷ホラ吹き:な〜るほど。じゃあ、悪玉リポタンパクは「酸化LDL」と「小型LDL」の2つですか? 媚多眠氏:「IDL」なんてのもありますね。 迷ホラ吹き:そりゃ、初耳だ! DとLは、これまでに出てきたものと同じでしょうが、Iは何ですか? ぼやき先生:Iはintermediate。IDLは「intermediate density lipoprotein」の頭文字を取ったものさ。 迷ホラ吹き:インターミディエット。ってことは、中間のってことですか? ぼやき先生:そう。「中間比重リポタンパク」とか「中間型リポタンパク」なんていうんだな。 迷ホラ吹き:中間っていったって、どれとどれの中間なんでしょう? 媚多眠氏:VLDLとLDLの間です。通常は速やかに代謝されるんですが、LPL活性が低下していると血中にたまりやすいってことですよね。 ぼやき先生:そして、マクロファージはこのIDLを食べてしまうのさ。 迷ホラ吹き:酸化されてなくても? ぼやき先生:そのようだな。 迷ホラ吹き:ちょっと、まとめてみます。 媚多眠氏:頭の中の整理は大切です。 迷ホラ吹き:いくつかあるリポタンパクのうち、マクロファージに食べられるものを悪玉リポタンパクといい、小型LDLとIDLがある。 媚多眠氏:はい。 迷ホラ吹き:で、内臓脂肪が多くなりすぎると、その悪玉の小型LDLとIDLが増えてしまう。 媚多眠氏:アハハ、かなり途中を省略しましたね。 ぼやき先生:リポタンパクの種類は、せっかくだからもう一つ覚えておくと良いだろう。 迷ホラ吹き:まだ、あるんですか。 媚多眠氏:「カイロミクロン」ですね。 迷ホラ吹き:カイロミクロン! またしても初耳で〜す! ぼやき先生:ほとんどが中性脂肪という代物で最も大きな粒なんだが、こいつの残骸もマクロファージの餌になってしまうんだな。 媚多眠氏:「レムナント」ですね。 |