タンパク質の良質度?-1 媚多眠氏:前回の話のポイントをチェックしておきますと、まず、生きているということは『代謝』が行われているということ。 迷ホラ吹き:そうでした。 媚多眠氏:そして、その代謝というのは『酵素』による化学反応だから、酵素が生命をにぎっているようなものだということでした。 迷ホラ吹き:だから、遺伝子DNAにある情報が、ぼやき先生曰く「実にあっさりしたもの」でもよかったんですね。全く、親は酵素の作り方しか子に伝えないなんて、驚きですけど親もラクしてますねえ…。 媚多眠氏:ラクしているかどうかは知りませんが、酵素ってのはタンパク質で、タンパク質の成分はアミノ酸ですから、遺伝子の情報としては、単なるアミノ酸のつなぎ方があるだけってことになるわけです。 迷ホラ吹き:ラクして命を握るとは、たいしたもんだぜ、オッカサン! 媚多眠氏:生命は複雑と単純の同居ってことで、お父さんも忘れてはいけません。 ぼやき先生:どうやら、酵素の重要性が分かってくれたようだな。しかし、こういった話から『酵素食品』とやらを有り難がるヤカラが出てくるので、せいぜい気をつけることだな。 媚多眠氏:私たちの身体が要求しているのは、酵素ではなくて、自分特有の酵素を作るのに必要な材料なんですからね。 迷ホラ吹き:でも、酵素自体を食べれば、自分で作らなくてもいいわけでしょう? 身体はラクが出来そうな気がしますけれど…。 媚多眠氏:酵素の形は人によってみんな違うって話、忘れちゃったんですか? それに、タンパク質はアミノ酸に分解されてから吸収されるので、酵素のまま身体に入って役に立つことは、まずありません。 ぼやき先生:身体の中でのタンパク質は、必要なときに必要なものを、必要なだけ作るというのが基本的原則だ。もし、酵素食品の酵素がそのまま身体に入ってきたとしても、身体にとっては『大きなお世話』といったところだろう。 迷ホラ吹き:なるほど、『小さな親切』にはならないのですね。 ぼやき先生:それに、人間のDNAには遺伝子が*10万種類あるといわれている。 媚多眠氏:ということは…。 迷ホラ吹き:遺伝子は酵素の設計図なんだから…。 媚多眠氏:そう。 迷ホラ吹き:ヒエーッ、10万種類もの酵素があるってこと! ぼやき先生:その可能性があるってことだ。ちなみに、大腸菌の遺伝子は4千種類なんだがね。 媚多眠氏:酵素が重要だと言っても、口から入れて価値が認められているのは、消炎酵素と消化酵素くらいのものですね。
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タンパク質の良質度?-2 迷ホラ吹き:酵素食品には価値がないってことですね。 媚多眠氏:まったく無いわけじゃないかもしれませんが、そんなものに関わるより、効率良く酵素の材料になれるものを食べたほうが、よほどいいってことですよ。 迷ホラ吹き:言われてみれば、納得。以前、知人に『○○酵素』ってのをすすめられたけど、買わなくてよかった。だって、説明が「血液がきれいになる」「身体にいい」「知り合いの○○さんも飲んでる」くらいしかないんだもの。そのくらい、僕だって言えますよ。小学生のころ、理屈っぽいって非難された僕には納得できませんでしたね。 ぼやき先生:迷ホラ吹きさんが理屈っぽくてよかったってことだな。しかしね、文化先進国の中で「理屈っぽい」といって非難されるのは、日本だけなんだな。 迷ホラ吹き:先生、いいこと言いますね。 ぼやき先生:まあ、考えてもみてくれ。理屈がなければ話にならんだろう。 媚多眠氏:話にならなければ、力づくの喧嘩ってことですよ。 迷ホラ吹き:暴力はんた〜い。 ぼやき先生:科学の世界となれば、絶対にそうだ。そして、生命についても分子生物学のおかげで理屈が通るようになったんだな。 媚多眠氏:「理屈抜きに効く」というのはインチキが多いってことなんですよ。私など、同業者にも「理屈抜き」が好きな人が多くて嘆いているんです。 ぼやき先生:最近、訪問販売やアメリカ資本の会員制販売組織などで、ビタミンを始めいろいろな健康食品を売っているシロートが多いんだが、だますつもり無くインチキをすすめちまう可能性があるので、要注意なんだな。屁理屈も困る。 媚多眠氏:すすめる人が友人や知人だと断りにくいし、「理屈抜き」に信じちゃうことも多いようですね。 迷ホラ吹き:僕は、専門家と知り合えてラッキーってことですね。ところで「必要なときに、必要なだけ作られる酵素」の材料になるものをお聞きしておかないと、いけないですね。 ぼやき先生:酵素はタンパク部分の『主酵素』と、そうでない部分、つまり非タンパク部分の『助酵素』からなるって話を思い出して、考えてみてくれ。 迷ホラ吹き:それは、遺伝子に関わるほうですから…、主酵素の話ということになり…、ということは『タンパク質』だということ…。 ぼやき先生:その通り。では、そのタンパク質に『質』の問題があるといったらどうかな? 『タンパク質の良質度』ってことなんだがね。 迷ホラ吹き:タンパク質の『質』の問題…? 媚多眠氏:酵素食品だってタンパク質ですよ。でも、吸収されるときはアミノ酸です。 ぼやき先生:そう、前にも言ったが、タンパク質作りに参加できるアミノ酸は20種類が決まっているんだな。 迷ホラ吹き:分かった。その20種類のアミノ酸全部を含むタンパク質を、良質タンパクというんじゃないですか? ぼやき先生:いいところをついたが、20種類のアミノ酸全部が問題なのではないんだ。身体で合成できないアミノ酸が問題なんだな。 |
タンパク質の良質度?-3 媚多眠氏:『必須アミノ酸』って聞いたことありませんか? 迷ホラ吹き:あります。そうそう、確か8種類あるんですよね。高校の生物の授業でやりました。僕はヘンなカタカナを覚えるのが好きで、そのとき覚えたから今でも言えると思いますよ。 ぼやき先生:ヘンなカタカナかい。まあ、そうかもしれんな。 迷ホラ吹き:いきますよ〜。「リジン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニン、最後はメチオニン」っと。 ぼやき先生:今ではそこに『ヒスチジン』を入れて、9種類ということになっているんだが、最後に、最も大切な『含硫アミノ酸』のメチオニンがくるところなど、立派なもんだ。 迷ホラ吹き:エッヘン、オッホン、どんなもんだい。 媚多眠氏:ちょっと褒めすぎのようですよ。一言クギを刺しておいたほうがいいんじゃないでしょうか。 ぼやき先生:そのようだな。その暗記した8種類の必須アミノ酸から、何か考えたことはあるのかな? 迷ホラ吹き:ぜ〜んぜん。 ぼやき先生:ガックリくるね。 媚多眠氏:丸暗記だけでは意味がないってことですね。栄養と結びつけたこともないのですか? 迷ホラ吹き:そう言えば、ハイ。確かに、意味を成したことはありません。トホホ…。 ぼやき先生:記憶した情報は、つなぎ合わせてこそ、意味を持つ。それを情報処理と言っていいだろう。この情報処理が出来る頭をイイ頭と言いたいんだ。 迷ホラ吹き:『イイ頭』ですか。 ぼやき先生:今日は、必須アミノ酸に関連した情報を記憶していって、イイ頭づくりに役立てたらどうかと思うんだが…。 迷ホラ吹き:今さら、僕の頭でもイイ頭になれるでしょうか? ぼやき先生:ガンコなイシアタマでなければね。 迷ホラ吹き:エッ? ぼ、ぼやき先生はガンコではなかった…。 媚多眠氏:シーッ! ぼやき先生:何か言ったかな。 迷ホラ吹き:ハイ。いえ、なにも…。 媚多眠氏:ガンコじゃないので、良質タンパクの説明をお願いしますって言ったのです。 |
タンパク質の良質度?-4 ぼやき先生:ウム、身体を作っている材料物質は常に壊れて新しいものと交代している。 迷ホラ吹き:それを『代謝』といいます、ハイ。 ぼやき先生:よかろう。身体のタンパク質が交代するってことは、それが分解してアミノ酸になる一方、新しいアミノ酸がやって来て『設計図』に従い『後がまのタンパク質』になるってことなんだな。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。 ぼやき先生:古いアミノ酸には、埃のようにミネラルやらいろいろな原子団がくっついていることが多いんだが、これを『修飾されたアミノ酸』という。 迷ホラ吹き:埃なのに『修飾』ってのもヘンですね。 媚多眠氏:細かいことは気にしない、気にしない。 ぼやき先生:感じが分かってくれればってことなんだがね。 迷ホラ吹き:先生の言いたいこと、分かりました。修飾されたアミノ酸を含まないタンパク質を、良質タンパクっていうんでしょう。 ぼやき先生:それも一つの条件なんだが、もう一つある。 迷ホラ吹き:そう言えば、さっきの必須アミノ酸の話が出ていないじゃないですか。 媚多眠氏:せっかく自慢げに言ったのにね。 ぼやき先生:後がまのタンパク質にならなかった古いアミノ酸は、毎日トイレ送りになっている。つまり、尿素や尿酸の形にして捨てるわけだ。 媚多眠氏:オシッコってことですよ。 ぼやき先生:尿素や尿酸の形になればどのアミノ酸もおんなじだが、その前のアミノ酸の比率が目のつけどころだってことなんだな。 迷ホラ吹き:そこで出てくるのが必須アミノ酸ですね。 媚多眠氏:そう、とらなきゃいけない必須アミノ酸です。 ぼやき先生:その通り。8種類の必須アミノ酸の比率が、人間が要求するアミノ酸の比率とぴったり合ったタンパク質を『プロテインスコア100』のタンパク質というんだ。 迷ホラ吹き:プロテインスコアですか。 媚多眠氏:『アミノ酸スコア』ってのもありますね。 ぼやき先生:両方ともタンパク質の良質度を表すものなんだが、基準が違うんだな。例えば、牛肉も鶏肉もアミノ酸スコアだと百点満点だが、プロテインスコアだと90にも届かない。厳しい条件なんだな。 迷ホラ吹き:プロテインスコア100の食べ物はあるんですか? 媚多眠氏:あります。鶏卵、タマゴですよ。 ぼやき先生:タマゴは、ジャンジャン食べたほうがいいってことだな。 |