タマゴは食べるべきか否か-1 媚多眠氏:タンパク質の良質度を表すのが『プロテインスコア』で、百点満点の食べ物がタマゴだから、タマゴはジャンジャン食べましょう、というのが前回の話でした。 迷ホラ吹き:でも、タマゴはコレステロールが多いから一日一個まででしょう? 媚多眠氏:そうくると思いました。ウチの店でも、タマゴの話をするとコレステロールがどうのこうのという人が多いんです。 迷ホラ吹き:だって、コレステロールが多いと動脈硬化になるんでしょう? 心配せずにはいられませんよ。 ぼやき先生:そうとも限らんが…。では、コレステロールが少ないと、どうなるか知っているかな? 迷ホラ吹き:少なければ問題ないでしょう。絶好調じゃないんですか? 媚多眠氏:いえね、『細胞膜』が弱くなるんですよ。 迷ホラ吹き:サイホウ膜? サイボウ膜じゃないんですか? ぼやき先生:正しくは『サイホウ』なんだが、まあどちらでもいいか。ここではコレステロールが少なくなって、その細胞膜が弱くなるとガンになりやすいってことが問題なんだな。 迷ホラ吹き:エェーッ! ガ、ガンですか! 媚多眠氏:血中コレステロール値は、やや高めの人のほうが長生きするっていう疫学調査もあります。 迷ホラ吹き:多いと動脈硬化で、少ないとガンですか。ああ、こまった困った。どっちを選ぼうか。 媚多眠氏:そうあわてないで。どっちとも選ばなければいいんではないですか。 迷ホラ吹き:そりゃ、そうですけどね。 媚多眠氏:前回までの話も絡みますけれど、ちゃんと酵素が働き正常な代謝が行われていれば、血圧だの血中コレステロール値だのは、ちょうどよくなるようにできているんですよ、我々の身体ってものは。ホメオスタシスっていうんですけどね。 ぼやき先生:「正常な代謝が行われるために重要な酵素」の話から、タマゴを食べようって話が出てきたんだがな…。 迷ホラ吹き:そうでした、そうでした。話はめぐって空回り、なんちゃって…。 媚多眠氏:ちょっとォ、コレステロールについて、知らなさすぎるんじゃないですか? 迷ホラ吹き:おっと…。そ、そこんとこヨロシク。 媚多眠氏:あっ、ひらきなおりましたね。 迷ホラ吹き:エヘヘ…。善玉と悪玉があることくらいは知っていますけどね。ほとんど知らないんですよね。よろしくお願いします。 |
タマゴは食べるべきか否か-2 媚多眠氏:では、まず、クイズを一ついきます。 迷ホラ吹き:おてやわらかに。 媚多眠氏:次の中から、コレステロールを含まない食品を選んでください。『大豆、とうもろこし、アーモンド、ピーナッツ、コンブ、ソバ、うどん』 迷ホラ吹き:コレステロールを含まない食品、ですか…。 媚多眠氏:そうです。よく考えて。 迷ホラ吹き:大豆にコンブ、ソバ、でどうだ! ぼやき先生:元気だけはいいんだな。 媚多眠氏:でもブッブー、不正解。 迷ホラ吹き:違ったかあ。残念。 媚多眠氏:正解は全部です。 迷ホラ吹き:ヘッ? 媚多眠氏:全て、コレステロールを含みません。 迷ホラ吹き:アーモンドやピーナッツもコレステロールを含まない…? 媚多眠氏:植物ですからね。 迷ホラ吹き:植物にはコレステロールはないんですかぁ。チーットも知らなかった。 ぼやき先生:海苔やヒジキなど、例外はあるんだが、コレステロールがあるのは基本的に動物だけなんだな。 迷ホラ吹き:じゃあ、植物だけ食べていればコレステロールは減るってことですね。 媚多眠氏:でも、生まれつき植物しか食べない草食動物、例えばウサギの体にもコレステロールはあるんですよ。 迷ホラ吹き:あれ? 草食動物ってことは、コレステロールを含むものは食べないってことですよね。 媚多眠氏:そうですよ。でも、さっき言ったとおり、動物の体にはコレステロールがあります。 迷ホラ吹き:そうか、じゃあ、ウサギの体のコレステロールはどこから来たんだろう? 媚多眠氏:ウサギが、自分の体の中で作っているに決まっているじゃないですか。 迷ホラ吹き:ふ〜ん。自分で作るってことは、ウサギの体にとって必要なんでしょうね。 ぼやき先生:そのとおり。コレステロールは身体にとって、とても大切で必要な物質なんだな。人間も必要量の60〜70%は自分で作っているんだ。主に肝臓で作るんだがね。 迷ホラ吹き:人間も自分で作っているんだ。 ぼやき先生:肝臓で作られたコレステロールは、血流に乗せて身体中の細胞に運ばれるわけなんだな。しかし、コレステロールはアブラだ。そのままでは水に溶けないので、タンパク質に結合させて運ぶんだ。それを『LDL』というんだな。 媚多眠氏:LDL、聞いたことありますか? 迷ホラ吹き:う〜ん。あるような無いような。 ぼやき先生:そして、余ったコレステロールはやはりタンパク質に結合させて、肝臓に戻しているんだ。それを『HDL』というわけだ。 |
タマゴは食べるべきか否か-3 迷ホラ吹き:あっ、分かりました。それが善玉と悪玉だ。 媚多眠氏:どっちが善玉ですか? 迷ホラ吹き:どっちともいえませんね、今の話では。両方とも重要なようですが…。 ぼやき先生:LDLの『LD』はLow Densityのことで『低比重』、HDLの『HD』はHigh Densityのことで『高比重』の意味なんだ。おシリの『L』はどちらもLipoproteinの頭文字で『脂タンパク』ってことさ。 媚多眠氏:コレステロールというアブラを含むタンパクだから、脂タンパクですね。 ぼやき先生:だから、LDLを日本語で言えば『低比重脂タンパク』となり、HDLは『高比重脂タンパク』となる。脂タンパクはそのまま『リポタンパク』ということが多いんだがね。 媚多眠氏:さて、ここでクイズをもう一つ。LDLとHDLでは、どちらの方がコレステロールを多く含むでしょう? 迷ホラ吹き:今度は、カンで勝負しないでちゃんと考えてみます。 媚多眠氏:そうそう、理屈っぽい人はそうこなくっちゃ。 迷ホラ吹き:LDLは比重が低くて、HDLは比重が高いんですよね。 媚多眠氏:そうです。 迷ホラ吹き:比重が低いっていうのは軽いってことだから、LDLのほうがHDLより軽いってことだ…。 媚多眠氏:ふんふん。 迷ホラ吹き:コレステロールはアブラで、アブラは水に浮かぶ。アブラは軽いってことだから、コレステロールを多く含むほうが軽いってことになる。LDLの方が軽いんだから、コレステロールを多く含むのはLDLです。 媚多眠氏:ピンポーン。 ぼやき先生:研究の最先端ではカンも大切だが、勉強の基礎は理屈を通さねばいかんってことだな。 迷ホラ吹き:そのLDLで身体中に運ばれたコレステロールは、どうなるんですか? 媚多眠氏:そうですね。では、そろそろコレステロールの働きをきちんと勉強しておきましょう。 ぼやき先生:ウム、しっかり覚えてくれ。 迷ホラ吹き:がんばってみます。 ぼやき先生:まずは、最初に少しふれた細胞膜の原料になるって話だな。これは、細胞膜の構成成分の一つだってことなんだがね、コレステロールが足りないとこの細胞膜が弱くなって、ガンになりやすくなったり出血しやすくなると言われているんだ。 媚多眠氏:ガンだけでなく、脳出血などのリスクも上がるってことです。 迷ホラ吹き:細胞膜が弱くなって、ガンと脳出血ですか…。 媚多眠氏:ジュウブン、コワイと思うんですが。 迷ホラ吹き:確かに、こりゃあ動脈硬化よりコワイや。 ぼやき先生:それはどうか分からんが、次は、ステロイドホルモンの原料になるってことだ。 |
タマゴは食べるべきか否か-4 迷ホラ吹き:あの副作用で有名なステロイドホルモンですか。 媚多眠氏:本来は自分の身体で作られるべきホルモンですが、体内で足りないときに医師から処方されます。効き目は抜群ですが、副作用が心配というわけですね。 ぼやき先生:つまり、コレステロールが足りないと、体内でステロイドホルモンが足りなくなりやすいってことなんだな。ホルモンが足りなければ、身体の調節はうまくいかん。だいたい、ステロイドってのはコレステロールの仲間っていう意味なんだ。 媚多眠氏:副腎皮質ホルモンや、男性ホルモン・女性ホルモンなどが、この仲間なんですね。 ぼやき先生:そして、前に言ったことなんだが、ビタミンDの原料にもなっている。 迷ホラ吹き:それで、ビタミンDはホルモンの仲間だっていったんですか。 媚多眠氏:そういうことですね。 ぼやき先生:コレステロールの『コレ』は『胆汁』、『ステロ』は『固い』、『オール』は『アルコールの仲間』といった意味なんだがね、身体中で余ったコレステロールはHDLにのっかって肝臓に運ばれ、『胆汁酸』に変えられ胆汁として胆のうに蓄えられる。 媚多眠氏:胆汁って知ってますか? 迷ホラ吹き:媚多眠氏のお店で買った消化剤の成分として入っていたような気がしますが…。 媚多眠氏:よく覚えていてくれました。リパーゼという脂肪分解酵素と一緒に働いて、脂肪、つまりアブラものの吸収を助けるのです。と言うことは、ビタミンのEやAの吸収もってことです。 ぼやき先生:胆汁には、使い古しの赤血球の一部『ビリルビン』なども含まれるんだが、要するに体内の余計なものを捨てているとも言えるわけだ。しかし、捨てたものでアブラの吸収をよくするところなんかが、生体のよくできたところなんだな。 媚多眠氏:どうです? コレステロールが大切なものだってこと、分かってきましたか。 迷ホラ吹き:ええ、ほんとに大切なものなんですねえ。でも、どうしてこんなに悪者扱いする人が多いんですか? ぼやき先生:その話を含めて、もう少し詳しく細胞レベルの話をしようと思うんだ。分子栄養学の話なんだからね。 媚多眠氏:『細胞膜の構造』や『LDL受容体』について、その他『活性酸素』の話なども出ますね。 迷ホラ吹き:おっ! 急に難しそうになってきましたね。 ぼやき先生:少し厄介な話をせざるを得ないんだが…。 迷ホラ吹き:じゃあ、今回はここまでで勘弁してください。コレステロールの働きをよ〜く復習してきますから。 ぼやき先生:ウサギの話も絡むので、よく復習しておくことだな。そして、やはりタマゴは食べたほうがいいということだ。ただし、ナマは感心しないがね。 媚多眠氏:話はだんだん佳境に入っていきますよ。 |