変身する怖い活性酸素-1 迷ホラ吹き:前回は、ついに4種類の『活性酸素』が出揃っちゃいましたねー。 媚多眠氏:とは言っても、2種類については、まだ名前だけじゃないですか。 迷ホラ吹き:そうでした。 媚多眠氏:『除去酵素』の方はいかがですか? 迷ホラ吹き:確か『なんとかアーゼ』ってやつですよね。これは、ディスムターゼの『SOD』、それと『カタラーゼ』はいいんですが、悲しいかな最後の一つはちょっとメモに頼らなければいけません。 ぼやき先生:いやいや、それだけ覚えておれば立派なもんだ。それより、覚えた言葉も使えなければ意味がないんだが、いかがかな。 媚多眠氏:いっしょに復習してみましょうか。 迷ホラ吹き:まず、僕たちの身体で一番多く発生する活性酸素が『スーパー・オキサイド』で、それにたいしてはSODという酵素でやっつけます。ただし、SODはスーパー・オキサイドを『過酸化水素』っていう別の活性酸素に変えるだけなんですね。 媚多眠氏:OK! そして…? 迷ホラ吹き:そして、過酸化水素を2つの酵素で手分けして無害なものに変えるというわけです。 媚多眠氏:そのとおりです。過酸化水素を除去する酵素というのが『カタラーゼ』と『グルタチオン・ペルオキシダーゼ』の2つでした。 迷ホラ吹き:そうそう、カタラーゼとグルタチオン・ペルオキシダーゼでしたね。この長ったらしいのが覚えにくかったんですよ。 ぼやき先生:グルタチオンというのは大事な『トリ・ペプチド』だから、しっかり覚えておいてほしいものだな。 迷ホラ吹き:あの…。 ぼやき先生:おっと、いわれる前に説明しよう。 迷ホラ吹き:先生、反応速いですね。 ぼやき先生:そうだろう。まだ酵素がしっかり働いていて、ボケちゃおらんてこった。 媚多眠氏:先生、そんなことで喜んでないで、グルタチオンの説明をお願いしますよ。 ぼやき先生:ウム。アミノ酸が繋がってできたのがタンパク質だ、ということは覚えているかな。 迷ホラ吹き:アミノ酸とタンパク質の関係は覚えていますよ。 ぼやき先生:それは良かった。グルタチオンはそのアミノ酸が3つ繋がってできたものなんだな。 迷ホラ吹き:じゃあ、グルタチオンはタンパク質ってことですか? ぼやき先生:ここの説明は面倒だから簡単にしておくが、アミノ酸の数が50個から数千個繋がらないとタンパク質とはいわないんだな。繋がったアミノ酸の数が少ないやつは『ペプチド』というんだ。タンパク質の弟分みたいなものなんだがね。 迷ホラ吹き:タンパク質の弟分のペプチドですか。 |
変身する怖い活性酸素-2 媚多眠氏:グルタチオンはアミノ酸の数が3つだから、トリ・ペプチドというわけです。 迷ホラ吹き:なるほど、それは知っています。3人で音楽を演奏することをトリオっていいますからね。 ぼやき先生:その3つとは『グルタミン酸』『システイン』『グリシン』というアミノ酸だ。 迷ホラ吹き:な〜んだ、全部必須アミノ酸ではないってことですね。身体の中で合成できるから安心ということだ。 ぼやき先生:流石さすが、と言いたいところなんだが、システインは必須アミノ酸の『メチオニン』がないと合成できないんだな。 媚多眠氏:メチオニンといえば、不足しやすい必須アミノ酸なんですよ。 迷ホラ吹き:そうなんですか。うまくいかないもんですね。 媚多眠氏:でもね、メチオニンはタマゴには多いんですよ。 迷ホラ吹き:やっぱり、タマゴなんですか。 ぼやき先生:ちょっと話が脱線してしまったが、とにかく、グルタチオンを基質とする『グルタチオン・ペルオキシダーゼ』は非常に重要な酵素だからしっかり覚えておいてくれ。 迷ホラ吹き:は〜い、分かりました。グル・タチ・オン・ペル・オキシ・ダーゼ、と。 媚多眠氏:ここで、2つの活性酸素の除去、つまり「スーパー・オキサイドと過酸化水素の除去」に関する栄養条件をまとめておこうと思います。 迷ホラ吹き:まずはタンパク質ですね。何たって除去酵素、酵素ですからね。酵素といえばタンパク質、と。 ぼやき先生:よく理解しておる。 迷ホラ吹き:次はビタミンですか? 媚多眠氏:いえ、ビタミンも大事ですが、ここでの注目はミネラルなんです。 迷ホラ吹き:ミネラル? ぼやき先生:鉱物質ってことだ。昔の栄養学では無機質とも言ったんだがね。 媚多眠氏:今までに出てきた活性酸素を消去する酵素は、みんなその構造の中にミネラルを組み込んでいるんです。 ぼやき先生:カタラーゼには『鉄』、グルタチオン・ペルオキシダーゼには『セレン』という具合だ。 迷ホラ吹き:SODはどうなんですか? ぼやき先生:もちろん必要だ。『銅』『亜鉛』『マンガン』などだな。 迷ホラ吹き:それらも栄養条件になるってことですか? 媚多眠氏:そういうことなんですが、ミネラルはバランスが必要で、ビタミンのように特別多く必要だということはありません。 迷ホラ吹き:ここでは栄養バランスでいいってこと? 馬とおんなじって言われません? ぼやき先生:わっはっはっは、馬耳東風かい。どうでもいいことまで覚えておるな。 迷ホラ吹き:えへへへ…。 |
変身する怖い活性酸素-3 媚多眠氏:そんなわけで、ミネラルは不足がちなものについて気をつければよいことになります。 迷ホラ吹き:カルシウムが足りないって話はよく聞きますけど、今は出てきませんでしたね。 媚多眠氏:そうですね。活性酸素を除去する酵素の材料という意味では出てきません。 ぼやき先生:鉄、セレン、銅、亜鉛、マンガンの中で不足しやすいものといえば、まずセレンと亜鉛だろうな。 迷ホラ吹き:セレンと亜鉛はどんな食べ物にあるんですか? ぼやき先生:貝の牡蛎や、酵母に多いんだが、場合によってはミネラル剤を利用したほうが手っ取り早いかもしれんな。 媚多眠氏:最近やっと、良いバランスのミネラル剤が見つかりました。 迷ホラ吹き:ところで、まだ名前しか出てきてない残りの活性酸素の話はどうなっているんでしょう。 媚多眠氏:ヒドロキシル・ラジカルと一重項酸素ですね。先生お願いします。 ぼやき先生:一重項酸素については、光増感物質による反応で生じるということがほとんどだし、ありふれた病気との関係は少ないので、ここではヒドロキシル・ラジカルの話を中心にしようと思う。 媚多眠氏:ヒドロキシル・ラジカルの酸化力は強力ですからね。 ぼやき先生:実は、酸化障害に直接関わる活性酸素は、ほとんどがヒドロキシル・ラジカルで、ほかはあまり関係ないんだな。 迷ホラ吹き:エエッ!? それじゃ、さっきまでの2つの活性酸素については覚えても無駄だったってことですか? そりゃないですよ。苦労して覚えたのに…。 媚多眠氏:まあ、あわてないでください。 ぼやき先生:前回にも言ったんだが、スーパー・オキサイドや過酸化水素をしっかり始末できないと発生するのがヒドロキシル・ラジカルなんだ。 媚多眠氏:つまり、スーパー・オキサイドや過酸化水素は、ほっとけばヒドロキシル・ラジカルに変わるってことなんですよ。 ぼやき先生:特に過酸化水素は、寿命が長いので要注意だ。 迷ホラ吹き:寿命が長い? ぼやき先生:寿命が長いだけでなく、まずいことに『生体膜』も通り抜け自由なんだな、過酸化水素は。 迷ホラ吹き:生体膜? 細胞膜とは違うんですか? ぼやき先生:細胞膜に包まれたのが細胞で、細胞の中にはいろいろなものがあるんだが、それらも膜に包まれていることが多い。ご存知DNAも細胞の中の核の中にあるんだが、その核も膜に包まれているんだな。それらの膜をひっくるめて『生体膜』というんだ。 媚多眠氏:DNAが入っているところは『核』ですから、DNAを包んでいる生体膜は『核膜』といいます。 迷ホラ吹き:なるほど、生体膜には、細胞膜とか核膜とかがあると思っていいわけですね。 |
変身する怖い活性酸素-4 媚多眠氏:その通りですけど、その膜を通り抜け出きるのが過酸化水素だということに、どんな意味があるか考えてみてください。 迷ホラ吹き:もし、核膜を通り抜けたら…。 媚多眠氏:当然、DNAに出会うでしょうね。 迷ホラ吹き:そ、それはまずいんじゃないですか! ぼやき先生:それが分かるかい。 迷ホラ吹き:だって、遺伝子DNAが酸化したらきっとヤバイですよ、これは。 ぼやき先生:そこで、ヒドロキシル・ラジカルが発生したらDNAの二重ラセンの片方くらいすぐに切れてしまうだろうな。 迷ホラ吹き:あっ、そうだ。除去酵素はどうしたんですか。ヒドロキシル・ラジカルを除去する酵素ですよ。スーパー・オキサイドや過酸化水素を除去する酵素があるんだから、ヒドロキシル・ラジカルだって何とかなるでしょう? 媚多眠氏:それが、無いんですよ。 迷ホラ吹き:えーっ! なんで。 ぼやき先生:なんでと言われても困るんだが、生体はヒドロキシル・ラジカルを除去する酵素を持っていないんだな。 迷ホラ吹き:じゃあ、マジでヤバイじゃないですか。 媚多眠氏:だから、スーパー・オキサイドや過酸化水素は、さっさと始末しなければ危険だということなんです。 ぼやき先生:そこで、酵素だけに頼ってはおれんので『低分子・抗酸化物質』が利用されるわけなんだな。 迷ホラ吹き:何ですか、その『テイブンシ・コウ・サンカブッシツ』ってのは。 ぼやき先生:酵素は自分の身体でつくるタンパク質で、分子量の大きい高分子ということなんだ。それに対して低分子というのは分子量が小さいということなんだな。 媚多眠氏:つまり、食べてそのまま吸収されるということです。抗酸化物質は、酸化に対抗するということ、つまり身体が酸化するのを防ぐ物質という意味ですよ。 迷ホラ吹き:ようするに、どういうことですか? ぼやき先生:体内で作る抗酸化物質、つまりSOD、カタラーゼ、グルタチオン・ぺルオキシダーゼ以外のものをも利用するってことだ。 迷ホラ吹き:酵素以外のものってどんなものですか? 媚多眠氏:その詳しい説明は次回ということで、今日はその名前だけでも教えていただきましょうか。まずはビタミンから…。 ぼやき先生:ビタミンE、Cを筆頭にA、B2、がある。 迷ホラ吹き:またしてもEとCは出ましたね。ビタミン以外のものもあるんですか? ぼやき先生:イチョウ葉を筆頭とする『フラボノイド』やニンジン、カボチャの皮に多い『カロチノイド』、お茶やワインで有名になった『ポリフェノール』もあるんだな。 |